有名病院 この診療科のイチ押し治療

【働く女性専門外来】関東労災病院・産婦人科(神奈川県川崎市)

関東労災病院・産婦人科の星野寛美医師
関東労災病院・産婦人科の星野寛美医師(提供写真)

 女性の中には、女性特有の疾患に対する恥ずかしさなどから相談できずに悩んでいたり、男性医師への抵抗感から受診が遅れて病気を悪化させてしまうケースがある。

 そんな女性患者が安心して受診できるようにと、同科が2001年に開設したのが「働く女性専門外来」。毎週木曜日の午後(14時~)を診療日にしている。同外来を担当する星野寛美医師(顔写真)が言う。

「開設した経緯は、その当時、女性の病気治療や検査値に性差が必要と『女性外来』が提唱されはじめていました。それで当院は労災病院ですので、“働く女性”の専門外来としたのです」

 とはいっても、OLに限定して診ているわけではない。

 受診者は中学生から70代(中心は30~50代)と幅広い。診療対象の疾患も、どんな病気でもかまわない。女性医師に診てもらいたい女性患者が最初の窓口として訪れる“女性のための総合診療外来”の役割を果たしている。

「転医されてくる患者さんは、前の病院では3分診療で説明を十分にしてくれない、話を十分に聞いてくれないなどの不満や不安があって来られる方が多い。当外来は完全予約制で、初診は最低でも20分くらいは時間をかけます。再診でもゆっくり話をしたい患者さんには、できる限り時間を割いています」

 婦人科疾患で多いのは、月経困難症、更年期障害、子宮筋腫など。精神科疾患では、うつ病、不安障害、不眠症など。その他では、筋緊張性頭痛、尿失禁、貧血、冷え性なども多い。専門的な治療が必要な場合には、詳しく説明したうえで他科や専門病院を紹介する場合もあるという。

「最も多いのは、何日も仕事や家事を休まなくてはいけないような重い生理痛です。この場合、多くは『低用量ホルモン剤(経口避妊薬と同等のもの)』を使うことで症状が軽くなります。吐き気などの副作用が強く出るような人には、芍薬甘草湯などの漢方薬を処方します」

「月経前症候群(PMS)」という疾患は、職場や家庭でもっと周囲の男性に理解してもらいたいという。月経の2週間くらい前になると女性ホルモンの影響で、イライラ、怒りっぽくなる、眠気、集中力低下、抑うつ感などの精神症状が表れる。これらの症状が原因で人間関係を悪くしてしまうケースがあるのだ。PMSは症状に合わせて、低用量ホルモン剤、抗うつ薬、利尿剤、漢方薬などを使って治療するという。

「職場が関連したストレスが誘因で体調不良になる女性も多く、男性上司からセクハラやパワハラを受けて睡眠障害や不安障害になる人もいます。そのような患者さんでも、新しい職場が決まって元気になるまでサポートしています。この専門外来だからこそ、それができるのです」

 同外来の診療において、患者に対して「説得」や「指導」ということはしていない。女性の健康に関する相談なら何でも受け入れ、悩んでいる気持ちに寄り添う診療を心がけているという。

■データ
独立行政法人労働者健康安全機構の運営する労災病院(32施設)の一つ。
◆スタッフ数=医師8人(うち同専門外来担当医師1人)
◆年間初診患者数(2015年)=933人(うち同専門外来患者数=52人)