病院は本日も大騒ぎ

ヌードポスターが80歳肺がん患者の寿命を延ばした

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 こんにちは! 関東圏の総合病院で看護師の婦長を務めている看護師歴30年のミチヨです。

 病院にはさまざまな職務規約があり、いずれも厳守しなければなりません。ただ、個人の判断でこの規約を破ることがあります。大きな声ではいえませんが、その一つを披露しましょう。

 私が担当した入院患者さんで、肺がんの治療を受けていた80代の男性がいらっしゃいました。看護師との会話でも敬語を使い、性格も穏やかで扱いやすい患者さんの一人でした。

「こんなおじいちゃんでも、若いころは女性が好きで随分とモテたんですよ」などと若い看護師を笑わせていましたが、徐々に元気がなくなっていきました。担当医師から「余命は2週間ぐらい」と告げられていたのです。

 少しでも元気を取り戻してもらいたいと思った私は、ある日、この患者さんの枕元の壁にこっそりと女性のヌードポスターを貼りました。そして、「ほら! これを見て元気を出して!」と声をかけると、満面の笑みを見せながらポスターをジッと眺めてくれたのです。

 入院患者さんが枕元に子供の写真や孫からの手紙を置いたり、あるいは壁に貼ったりすることはよくあります。でも、ヌードポスターなんてもちろんNG。まして、看護師が貼るなどもってのほかです。上司や担当医に見つかれば処分されるでしょう。

 でも同僚の看護師たちは私の行動に理解を示してくれて、担当医が入室するときは、直前にそのポスターを剥がすという行為を繰り返しました。患者さんは毎日、ニコニコしながら飽きることなくポスターを眺めています。

 そんな思いがけない強い刺激が、生きる活力を生み出したのでしょうか。笑顔になられたのがヌードポスターのおかげとは言い切れませんが、その患者さんは宣告された期間よりも1カ月以上長く生きることができました。

 病院の規約を破ったことは間違いありません。しかし、私の長い看護師人生の中で、記憶に残る「おきて破り」の一つになっています。