良医が警告 やめてはいけないクスリ

痛風の薬をやめる危険 真に怖いのは脳心血管疾患と腎不全

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「これがいちばんヤバイ 痛風の薬も本当は飲み続けてはいけない」

 こんな週刊誌の見出しに惹きつけられた人は多いだろう。記事では、尿酸生成抑制剤(フェブリク、ザイロリック、ウリアデック、トピロリックなど)の副作用(体中の皮膚がむける、アナフィラキシー、薬の飲み合わせによっては、腎臓や肝臓を痛めるなど)に触れ、「痛風の激痛を取るか、重篤な副作用を取るか、究極の選択を迫られる」としている。

 しかし、尿酸生成抑制剤を服用する目的は、痛風発作を抑えることだけではない。この疾患を長年取材する医療ジャーナリストは「痛風発作はつらいが死なない。主な目的は別のところにある」と指摘している。

 認定痛風医である「両国東口クリニック」大山博司理事長が言う。

「着目すべきは命に関わる合併症のリスクです。尿酸値が高いまま放置すると、脳心血管疾患のリスクが高くなり、総死亡が増える。また、尿酸の結晶が腎臓に沈着し、腎機能を低下させ、腎不全に至り、人工透析や腎移植が必要なところまで悪化する人もいます」

「虎の門病院」の桑原政成医師が高血圧学会で報告した発表によれば、「日本人は尿酸値が1(mg/dl)上昇するごとに、男性で18%、女性で25%高血圧を合併しやすい」という。理由として、「尿酸値が高いと尿酸が血管に取り込まれ、動脈硬化を引き起こす」「血管を収縮させるホルモンの分泌が腎臓から増える」「活性酸素が生じ、血管拡張物質の一酸化窒素と結合して血管のしなやかさが失われる」などを挙げている。

 尿酸値と高血圧の関係から、ガイドラインでは「尿酸値8以上」で高血圧患者の薬物治療を勧めているが、高血圧、ひいては脳心血管疾患のリスクを考えると、「高血圧がある人は、痛風発作がなくても7を超えたら薬物治療を考えた方がいい」と言う専門医もいる。

「食生活の見直しで尿酸値の低下を目指す。それで不十分なら、薬物治療を開始する。痛風発作ひとつにとらわれず、さまざまな合併症のリスクを考慮しなければなりません」

 痛風の薬には、尿酸生成抑制剤と尿酸排泄促進剤があり、前者は副作用から腎機能が低下した患者には減量が必要だった。しかし、2011年に40年ぶりに登場した薬では、腎機能が低下しても比較的安全に使えることが分かっている。

 痛風の薬を飲まなければ、それこそ「いちばんヤバイ」のだ。