狭心症、脳梗塞リスクも高く 夏バテに潜む低血圧を侮るな

肩こりも「低血圧」が原因かも?
肩こりも「低血圧」が原因かも?(C)日刊ゲンダイ

「肩こりがする」「体がだるい」「頭や目が痛い」「食欲がない」「手足が冷たい」――。この時季、「夏バテ」とひとくくりにされている症状の中には、「低血圧」が原因で起きているものがある。夏は血管が広がり、一年で最も血圧が低くなる。あなたの体調不良は血行不良が招いているのかもしれない。サラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

「低血圧」にはいくつかの種類がある。病気によるもの(二次性)、原因が分からないもの(本態性)、急に立ち上がったときに起こるもの(起立性)などだ。このうち、肩こりや疲労感、頭痛などの症状が表れるものが本態性低血圧だ。

「安静時の収縮期血圧(上の血圧)が100㎜Hg未満のものをいい、日本人の1.7~7%が該当するといわれています。そのうち10~20%に自覚症状があります。とくに夏場は“体がだるい”“肩こりがひどい”“手足が冷たい”などを訴えて病院に来て調べてみて、初めて自分が低血圧だと気がつく人も多いようです」

 実際、浜松医科大学心療内科を6~8月に受診し、「なんとなく体の調子が悪い」と訴えた人を調べたところ、4割が「低血圧」だったという。

「低血圧を侮ってはいけません。放っておくと不整脈や狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高くなります。最新の研究では、糖尿病の人の低血圧は死亡リスクが上がることも分かっています」

■休息とスタミナ料理だけでは治らない

 それにしてもなぜ、夏場に低血圧の症状が出る人が多いのか?

「自分では低血圧に気がついておらず、一般的に血圧が下がる夏に自覚症状が出るのでしょう。そもそも、低血圧は発見しづらい病気です。病院で血圧を測定すると、緊張感からか本来の血圧よりも20~30㎜Hg高くなることが多い。そのため高血圧は発見されても、低血圧は見逃されてしまうのです」

 また、低血圧の診断は単に100㎜Hg未満というだけでなく、あおむけに寝た状態と立った状態でそれぞれ複数回血圧を計測し判断する医師もいる。そのため、なかなか診断されないという。

「夏は冬に比べて一般的に血圧が5~10㎜Hgほど低い。喫煙者や肥満の人はその差がさらに大きい。寒い時季に血圧を測って、“自分は正常だ”と思い込んでいる人も多いのです」

 低血圧を改善するにはどうすればよいのか?

「血圧を維持しているのは、血液を送り出す心臓の強さと、送り込まれた血液を送り返す末梢血管のしなやかさです。それをコントロールする自律神経の乱れを正すことが大切なのです」

 それにはまず、規則正しい生活を心がけること。とくにいつも同じ時間に起きることが大切だ。

「副交感神経優位から交感神経優位に変わる『寝起き』を一定にすることで、自律神経を鍛えることができます。朝、シャワーを浴びるとさらに効果的です。また、夏場は知らず知らずのうちに汗を大量にかいています。通常より2~3グラム以上多めに塩を取る必要があります。味付けの濃い食べ物を取って、塩分不足に注意しなければなりません」

 ウオーキングなどの運動も必要だ。しかし、炎天下に野外で活動することは、中高年にとっては災いのもと。プールでの水中散歩や室内でのスクワットなどがお勧めだという。

 この時季の体調不良を「夏バテ」と決めつけてはいけない。ゴロゴロしてスタミナ料理を食べるだけでは解決しないこともある。覚えておこう。

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