前回、取り上げた補助人工心臓は、とりわけ米国で発展しています。患者さんの心臓はそのまま残しながら、心臓のそばに人工心臓を埋め込み、落ちてしまった心機能を助けるシステムです。
先進国は世界的にも高齢化が進んでいて、重症心不全の患者さんが増えています。米国では、年間2000例を超える心臓移植が実施されていますが、それでも移植ドナーが不足しています。そのため、補助人工心臓に大きな期待が寄せられ、進歩してきました。2002年には、移植適応がない重症心不全患者に対して、在宅治療を目的とした補助人工心臓による長期補助が保険償還され、さらに普及が進んでいます。
日本も、高齢化に伴って重症心不全の患者さんがこれからますます増えるでしょう。そうした状況に対応するためには、補助人工心臓は欠かせないといえます。しかし、現時点では、移植を前提に待機している患者さんの「ブリッジユース(橋渡し)」しか保険適用されません。移植適応がない患者さんでも、補助人工心臓を使った治療が受けられるような状況にならなければ、なかなか普及は進まないでしょう。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」