Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【九重親方のケース】すい臓がんと糖尿病の見過ごせない関係

九重親方(C)日刊ゲンダイ

 日本糖尿病学会と日本癌学会による「糖尿病と癌に関する合同委員会」は3年前、抽出した約33万5000人のうち、がんを発症した約3万3000人の追跡結果を発表。追跡した人たちを糖尿病とそうでないグループに分けて、がんの発症リスクを比較した結果、糖尿病の人はそうでない人に比べて、がんの発症リスクが2割高く、がんの種類別ではすい臓がんと肝臓がんが約2倍と有意に高かったのです。

 糖尿病で高血糖状態になると、血糖値を下げるためインスリンの血中濃度が高くなります。インスリンには、がん細胞の増殖を促す作用もあるため、糖尿病の人はがんになりやすく、中でもインスリンを分泌するすい臓や、ブドウ糖の“倉庫”ともいうべき肝臓にがんができると、糖尿病の人ほどインスリンの悪影響を受けやすいと考えられます。

 大横綱はがん発覚後にキッパリ断酒したそうですが、元気だったころは強い洋酒を好む酒豪で、幕下で低迷していたころ1日に3箱吸うヘビースモーカーだったという報道もあります。過度の飲酒と喫煙は糖尿病を助長し、がんについてもよくありません。この点も、「人ごととはいえない」ところです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。