数字が語る医療の真実

がん終末期の点滴に医学的効果は期待できない

 がんの末期の患者さんで、食事が取れなくなり、ベッドで横になっている時間が多くなると、もうあと数週間というのが平均的な経過です。

 こうした状況でしばしば問題となるのが、点滴をするかどうかです。本人はともかく、付き添いの家族は「最低限、点滴くらいは……」という気持ちになることが多いでしょう。現実の診療の場でも、家族の希望を受けて、私自身点滴をすることはよくあります。しかし、終末期の点滴の効果については意外な研究結果が示されています。

 この研究は、終末期で食事が取れず、脱水症状がある患者を対象に、「1日1000㏄の点滴をするグループ」と「100㏄の点滴をするグループ」を比較して、「だるさ」「眠気」「幻覚」「筋痙攣」の症状の変化で効果を検討しています。結果は2つのグループに症状の差はありませんでした。

 点滴するためには、針を刺す時の痛みもあります。点滴中は点滴の管につながれて、動きが制限されます。点滴にはそうしたデメリットが明らかなわけですが、少なくともそれを上回るような症状の改善は示されなかったのです。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。