「皮弁法」は血流の保たれた状況で皮膚や脂肪を移植する。かつては筋肉ごと取っていたが、合併症が起こりやすい。そこで筋肉を取らずに残し、皮膚や脂肪に血液を運ぶ細い血管(穿通枝)も含めて皮膚と脂肪だけを採取し、移植する。結果、「温かく柔らかい乳房」が実現する。「穿通枝皮弁」と呼ばれる。
採取する皮膚や脂肪は下腹部からが一般的だが、佐武部長は患者の希望に合わせて部位を選び、下腹部、背部、太もも、でん部など13カ所から選択している。
「脂肪移植」は、下腹部や大腿部などから吸引した脂肪組織をパスタ状に細かく精製し、細い注射器の針につけて1本ずつ移植する。皮弁法は皮膚や脂肪を採取するのでその箇所に傷がつくが、脂肪移植では目立つ傷ができない。
■自家組織による再建にもリスクがある
皮弁法か脂肪移植かは、乳がんの手術状況や胸の形などさまざまな要素から適応が変わる。ただ、いずれにしろ、自家組織には人工物にはないリスクがある。