当事者たちが明かす「医療のウラ側」

学校の検診で病気が見つからないのは当然

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 東京近郊の住宅街で耳鼻科医を開業しております。近くに小学校があるため、そこの校医もしています。耳鼻科検診で、何百人の子供たちを診るのですが、その子たちが私の医院の患者さんになることは、ほとんどありません。

 なぜなら、自分の病院でなら「こういう疑いがありますね」と指摘できても、学校の校医としてはハッキリと言えないからです。

 その理由の第一は、時間がないこと。流れ作業で診るため、よほどハッキリしている、命に関わる病気なら別ですが、「疑い」程度では指摘することはしていません。医師としても、自信を持って「この病気です」と断言はできません。

 ある子供に対しヘタに「○○病の疑いがあります」などと言おうものなら、同じような症状の児童全員に言わなければならなくなり、結果的にそうした子供の多くは私の病院に通うことになります。そうすると、「○×先生は校医をいいことに患者集めをしている」「大げさに言っている」といった悪評が立ってしまいかねません。

 第二に、今の学校の検診は“病気を見つける場”ではないからです。あくまでも検診は、“集団生活の障害になるような病気”を探す場であって、個々の病気を発見する場ではないのです。もっと言えば、学校側が期待しているのは、夏に開かれる学校のプールに入れる子供かどうかを見極めたいだけなのです。

 ですから、「この子は鼻の手術をした方がいいのに」「アレルギーの疑いがある」なんて場合でも大抵は黙っています。

 私の医院で「扁桃が大きいですね。治療した方がいいかもしれません」と親御さんに言うと、「うちの息子は先生が校医をしている小学校に通っていますが、そんなこと言ってくれなかったじゃないですか」と文句を言われることがあります。

 そもそも、学校の校医なんてものは誰もやりたがらない仕事です。子供たちにとっては年に1、2回ですが、校医は学年ごとに診るので、検診がある月は午前か午後に6日間、自分の医院を休まなければなりません。

 それでも、子供たちやその親御さんから感謝されるような病気が見つかることはまずないのです。学校の検診で病気が見つからないのは、ある意味、当然のことなのです。