私、子宮頚がんでした――。女優・大竹しのぶさん(59)がバラエティー番組でそう語り、話題を呼んでいます。幸い、がんになる手前の前がん状態で見つかり、「レーザーで取って、入院は2日くらい」だったそうです。この告白、読者の方にとっても重い意味があります。
子宮頚がんは、1970年代まで60~70代が発症のピークでしたが、80年代に40~50代に下がり、今では30代に低下。20~30代で発症する割合は、過去20年で2~4倍に達するのです。
2006年に出版された著書「私一人」によると、大竹さんの発症は24年前、35歳。このケースが人ごとでないのは、30代での発症が最近の典型例ということだけではありません。発見のキッカケや、その後の対応なども重要なのです。
1992年末の婦人科検診で発見されたようですが、婦人科系のがん検診受診率は目下3割ほど。子宮頚がんは早期なら治る可能性が高いのに、チャンスを失っている方が少なくないのです。
子宮頚がんは、ほぼ100%がHPVというウイルスの感染が原因。このウイルスは、セックスで媒介するため、セックスの低年齢化によって発症年齢が下がったと考えられています。
「人ごとではない」と指摘したもうひとつの理由が、このウイルス感染。つまり、感染を阻止できれば、発症を食い止めることができます。そのための手段がワクチン接種です。
接種率が8割に上る欧米では、子宮頚がんの発症者数も死亡者数も低下。子宮頚がんは“過去のがん”になっています。ところが、ワクチンが普及途上の日本では、発症者数も死亡者数も増えているのです。
HPVには、複数の型があり、ワクチンがすべての型をカバーするわけではありませんが、それでもワクチン接種で子宮頚がんの発症率は3割に下がり、海外には9割をカバーする新しいワクチンもあります。
ワクチンについては、接種後に痛みや運動障害などが生じたという指摘もありますが、世界保健機関(WHO)などは、繰り返しワクチンの有効性と安全性に関する宣言を発表しています。
第3が、治療法です。大竹さんはレーザーで切除されたように、日本の子宮頚がん治療は8割が手術。しかし、海外は逆で8割が放射線です。早期子宮頚がんの治療成績は、手術も放射線も同じで、どちらでも根治できるのに、ほとんどのケースで手術が選択されているのです。ステージ3で手術ができなくても、放射線で根治できる可能性もあります。
治療法の選択は、妊娠・出産というライフスタイルや働き方、体への負担などによって変わってきますが、複数の選択肢があることを頭に入れておくことは、とても大切です。産婦人科医に手術を提示されても、放射線の可能性があることも知っておいてください。
若い女性に急増する子宮頚がんですが、ワクチンと検診の2段構えで予防。そうやって早期発見早期治療を心掛ければ、妻や娘を子宮頚がんで失う悲劇はなくなるのです。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁