五輪期間中は要注意 脳を混乱させる「うつになる食べ方」

偏った食事がうつ病リスクを上げる
偏った食事がうつ病リスクを上げる(C)日刊ゲンダイ

 うつ病の引き金というと、精神的ストレスばかりが注目されるが、運動不足や夜型生活移行による睡眠不足、長時間のバーチャルリアリティー依存などの“隠れストレス”も大いに関係しているという。

 深夜にテレビ中継されているリオ五輪はまさにうつ病リスクの塊ともいえる。そこで忘れてならないのが食のストレスだ。食べ方もストレスとなり、うつ病リスクを上げるという。どんな食べ方が危険なのか。

■朝食抜きの丼物は危険

「こころに効く精神栄養学」(女子栄養大学出版部)の著者で、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病第三部の功刀浩部長に聞いた。

「朝食を抜き、昼は短時間で丼物をかきこみ、夜は肉中心の洋食で済ませる。深夜はテレビを見ながらお菓子を食べるというのが、うつになる食べ方の典型です」

 うつ病はストレスが引き金になる病気だ。それをコントロールするのが脳の視床下部で、この領域は食欲もコントロールするという。

「炭水化物を流し込み、朝食を抜くなど食事時間が不規則となる食べ方は、脳を混乱させ、食欲をおかしくさせるのでNG。うつ病の人は、いくつかの栄養素が不足していることが多い。肉や魚、野菜を丸ごとでなく、一部だけを加工した食品を食べ続けるのも危険です」

 これらは肥満に通じる食べ方でもある。実際、うつと肥満は相互関係があり、肥満はうつリスクを、うつは肥満リスクをそれぞれ1.5倍に高めることが分かっている。

■バランスの崩れた食事と過食

「お腹の脂肪細胞が膨れると脂肪細胞は『炎症性サイトカイン』という物質を放出し、全身に軽度の炎症を引き起こす。それが気分を憂鬱にし、頭と体を働かなくします。炎症性サイトカインは『トリプトファン』の分解も促進します。この物質は気分の安定や睡眠に欠かせないセロトニンやメラトニンの材料なので、その分解は気持ちの不安定にもつながります」

 仕事や人間関係で慢性的なストレスを感じている人は、ストレスホルモンであるコルチゾールや交感神経系が過剰に働き、食欲が強い。それにまかせた過食を続けると、インスリンの分泌量の減少や機能低下が起こる。

「インスリンの働きは、細胞にエネルギーとなるグリコースを取り込ませて、血糖を下げるだけではありません。脳内での神経保護作用や神経栄養作用の役割も担っています。インスリンの減少・機能低下は、脳の栄養不足を招き、破壊につながる。そのせいか、糖尿病の人は記憶とストレスのコントロールなどをつかさどる海馬の体積が縮小することが報告されています」

 糖尿病にかかっている人は、かかっていない人よりもうつ病になりやすいことは国内外の多くの研究で常識とされている。

「うつ病の人は、葉酸を含めたビタミンB群やD群のほか、鉄や亜鉛やマグネシウムなどのミネラル、DHA・EPAといった不飽和脂肪酸不足が目立ちます。葉もの野菜、納豆、レバー、豚肉、きのこや青魚、バナナや卵などを食べない人は注意が必要です」

 うつ病の人は、腸内の善玉菌であるビフィズス菌や乳酸桿菌の絶対数が少なく、ビフィズス菌の数が健康な人より劣っていることも功刀部長らの研究により世界で初めて報告された。

 ヨーグルトなどの発酵食品や食物繊維を食べない人も危険だ。とはいえ、これだけ多くの栄養素を少量とはいえ毎日取るのは難しい。

「ならば、緑茶を飲むのもひとつの方法です。緑茶にはリラックス効果があるとされるテアニンや、生活習慣病を予防するといわれるカテキンが含まれています」

 70歳以上の高齢者を対象にした東北大学の研究は、緑茶を毎日4杯以上飲む人のうつ病リスクは、1杯以下の人の半分だったと報告している。

 リオ五輪後にうつ病にならないためにも、食べ方には気をつけた方がいい。

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