数字が語る医療の真実

終末期の患者にとって「在宅酸素療法」は意外に効果がない

写真はイメージ(提供写真)

 数字の上では酸素投与のグループが勝っていますが、統計学的な差はないという結果です。

 では、夜の症状はどうでしょうか? 前者で7%、後者で11%と、むしろ空気を流したグループで改善度が大きい傾向にあります。

 在宅酸素療法の導入は、多くの呼吸困難の患者の症状をやわらげます。

 しかし、終末期の患者にとっては、症状をほとんど改善しないばかりか、チューブにつながれ、医療費の負担を増やすだけの“有害な医療”かもしれません。少なくとも、酸素が足りないのだから酸素を吸わせてあげればよいという単純な話でないことは明らかなのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。