看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

痛みを数字で表すと? 体が発するサインに向き合うこと

「全く痛くない」をゼロ、「最大の痛み」を10とした場合、今の痛みを数字で表現するといくつですか――?

 これは、がん患者さんへ医療者がよくする質問です。がんは痛みを伴うことが多いので、その程度を知るためです。

 また、痛み止めの薬の使用前後に聞くこともあります。薬の効果を測ることが目的です。この評価の方法についてはメリット・デメリットがありますが、今回は「体と向き合うこと」についてお伝えします。

 健康に近い状態で生活していると、自分の体のサインに意識を向ける機会があまりありません。しかし、不調が生じた瞬間から、体から発せられる痛みや苦痛のサインを受け取らざるを得ません。

 それを「痛い」「お腹が張ってつらい」と感じることは簡単ですが、苦痛を数字に変換したり、相手に伝わるように表現するには、思っている以上に体と向き合わなければなりません。

「なんとなくこのへんが痛い」よりは、「胃のあたりがズキズキと差し込むように7程度痛い」の方がより具体的です。さらに、前回の受診時や前日と比較して変化はあるか、薬の効果はどの程度かというのは、鎮痛薬や治療方針を検討する上で重要な情報になります。しかし、診察の場で急に思い出して表現するのが難しいのも実情です。

 私たち医療者は、がんによる苦痛や治療による副作用がどの程度体と生活に影響を及ぼしているかを知り、苦痛を最小限にとどめ、療養できるようにしたいと考えています。

 患者さんが発する苦痛のサインを過不足なく受け止められるとよいのですが、難しい場合もあります。そこで、普段から体と向き合い、苦痛のサインをメッセージに変換することを意識されるとよいと思います。

 外来などの短い診察時間で伝える工夫としては、以前ご紹介した緩和ケアに関する問診の活用や、簡単でよいので療養日誌を書くことを私はお勧めしています。