どうすれば治る? 疲れや目の痛みは“プチ脚気”の疑いも

五輪テレビ観戦だけが原因じゃない?
五輪テレビ観戦だけが原因じゃない?(C)日刊ゲンダイ

 連日のリオ五輪のテレビ観戦で体がだるく、肩が凝り、目が痛む――。スポーツ好きならずとも、この時期は体の不調に悩む人が多いのではないか。単なる眼精疲労や疲れなら、目を閉じて休息を取ればいいが、それでは症状が改善しないこともある。その場合は“プチ脚気”を疑った方がいいかもしれない。

 中村卓也さん(55=仮名)の唯一の楽しみは週末に録りだめしたテレビ番組を観賞すること。好きなビールとせんべい片手に、居間のテレビを独占するのが至福の時だ。

 しかし、長時間テレビを見続けると、肩こりとともに目の奥が痛くなり、全身に疲れが出る。そんなときは、妻に頼んでドラッグストアでアリナミンのドリンク剤を買ってきてもらう。2~3本飲んで、一晩寝ると目の疲れと肩こりが取れ、イライラ感や眼球の痛みが消えるという。

■原因はビタミンB1不足

 なぜアリナミンを飲むと肩こりや眼精疲労が解消されるのか? サラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「アリナミンというのは、もともと脚気治療薬開発の過程で発見された、ビタミンB1受容体“アリチアミン”が名前の由来です。脚気というのは、主に糖質やタンパク質の代謝に必要なチアミン(ビタミンB1)の不足によって、末梢神経や心臓の血流機能に障害を起こす病気。ビタミンB1は糖質の代謝を促す補助酵素です。白米やお酒好きな人の体内にビタミンB1が少なくなると、糖質をエネルギーに変えられず、疲れが出る。目の場合は眼球の動きが鈍くなったりするのです」

 脚気は疲労感や目の痛みなどの他に、手足のしびれ、食欲不振、便秘や下痢、むくみ、筋力低下、息切れなどの症状が出ることもある。

 要するに、中村さんは知らず知らずのうちに“プチ脚気”状態に陥り、そのたびにアリナミンドリンクでビタミンB1を補給していた可能性が高い。

「脚気は戦前に年間数万人が死亡した国民病です。栄養状態が良くなったいまは、過去の病気のイメージがありますが、そうではありません。中村さんのように白米、ジャンクフード、甘いジュースを好む人は、食事で不足するビタミンB1を補わなければなりません。しかし、こういう人は偏った食生活をしていて、ビタミンB1不足は解消されません。ビタミンB1は水溶性なので、汗や尿をたくさん出す夏は不足がちです。また、お酒を分解するにはビタミンB1が大量に必要になる。そのため、お酒好きは脚気になりやすいといわれています」(林院長)

 胃の手術をしてビタミンB1の吸収力が衰えている人も注意が必要だ。

■白米、お酒、ジャンクフード好きは要注意

 食べ物が豊富な現代では死に至るような深刻な脚気になるケースはほとんどないが、その手前のプチ脚気の患者はいくらでもいるという。では、プチ脚気を避けるにはどうしたらいいのか?

「ビタミンB1が大量に失われる、『飲酒』や『ジャンクフードやジュースなど糖分を大量摂取』『汗を大量にかく運動』などをする前後に、ビタミンB1が含まれている食べ物をとることです。例えば、豚肉、麦ごはん、ウナギ、大豆、青のり、タラコなどがおすすめです。お酒好きはカシューナッツをつまみとしてとるのもいいでしょう」(都内の栄養士)

 疲れは食べて治ることも知っておくべきだ。

 なお、脚気というと、その原因をめぐり、明治の文豪で陸軍軍医だった森鴎外と海軍軍医の高木兼寛とが対立した話は有名だ。「現役中に海軍の脚気を撲滅した高木が勝ち、森は負けた」と思っている人もいるが、これは間違い。森は「臨時脚気病調査会」を創設して脚気の原因究明に奮闘。「原因はビタミンB欠乏」と確定する業績を挙げ、死後40年後に日本の脚気根絶に寄与している。

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