天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心房細動からくる脳梗塞も…心臓は“脱水”にめっぽう弱い

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 暑い日が続いています。夏場、心臓で特に注意しなければならないのが「脱水」です。弱っている心臓ほど、体内の水分が不足すると血液を送り出す力が低下します。血液の粘度が上がって流れにくくなるため、心臓=ポンプはそれだけ大きな力が必要になり、負担が増大するのです。

 真夏にゴルフ場で倒れて救急搬送されたり、プロのサッカー選手が夏場の練習中に倒れ、そのまま急性心筋梗塞で亡くなったケースもあります。それほど、心臓には負担がかかるのです。

 高齢化が進む日本では、心房細動にも注意が必要です。脱水で心臓の働きが弱っていることに加え、気温が高くなると、体内の熱を放散するために効率的に血液を循環させようと心拍数が上がります。とりわけ高齢者は心房細動を誘発しやすくなるのです。

 心房細動は不整脈のひとつで、心臓が細かく不規則に収縮を繰り返し、血流が悪くなるため血栓ができやすくなります。血栓が移動して脳の血管で詰まると脳梗塞を引き起こします。脱水状態で血液がドロドロになっていると、さらに血管に詰まりやすくなるので、夏場はリスクが高いといえます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。