天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心房細動からくる脳梗塞も…心臓は“脱水”にめっぽう弱い

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 自分は健康だと思っている人でも、症状が出ているのに気付いていないだけというケースはたくさんあります。心房細動は、「なんとなく体が重い」とか「疲れやすい」といった軽い症状であることも多く、普段から脈拍を測るなどして注意していないと、なかなかわからないのです。

 夏場にそうした変調を感じていながら、放置して普段通り生活しているうちに、「あれ? なんかロレツが回らないぞ」とか「体の右側が麻痺してきた……」といった事態に見舞われ、心房細動からくる脳梗塞だったというケースもあります。

 心房細動は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある人や、その予備群で発症リスクが高くなります。該当する人は、夏場は脱水を起こさないように注意を払ってください。基本的な対策は、やはり適度に水分を補給することです。ナトリウムやカリウムといった電解質が含まれているスポーツドリンクがよいといわれていますが、糖分や塩分も多いので、65歳以上の高齢者は飲み過ぎに気をつけなければなりません。そうした点から、高齢者が脱水を予防するには、電解質と糖質の配合バランスが考慮されている経口補水液を飲むのが望ましいといえます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。