役に立つオモシロ医学論文

5時間以上テレビを見る人は肺塞栓症に注意 死亡リスクも

「エコノミークラス症候群」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。座席の狭い航空機のエコノミークラスで長時間、座ったままといった状況では、足の静脈内の血流が悪くなり、血管内に血の塊(血栓)ができやすくなります。この血栓が血流を巡って肺動脈に詰まってしまうと、「肺塞栓症」という病気を引き起こします。呼吸困難や、死亡することもある恐ろしい病気です。

 長時間にわたり同じ姿勢を維持することが肺塞栓症の危険因子といえますが、テレビを長時間見続けるのも、姿勢に変化が少ないように思われます。実際のところ、テレビを見続けていると肺塞栓症を起こしてしまうものなのでしょうか。

「テレビの視聴と肺塞栓症による死亡リスク」を検討した論文が米国心臓病学会誌(2016年7月26日付)に掲載されています。この研究は日本の大規模コホートを解析した観察研究で、8万6024人が解析対象となりました。1日のテレビの視聴時間を「2.5時間未満」「2.5~4.9時間」「5時間以上」の3つのカテゴリーに分類し、死亡リスクを比較。年齢や性別、高血圧の有無、喫煙状況など結果に影響を与えうる因子で調整して解析しています。

 中央値で19.2年の追跡調査の結果、1日のテレビ視聴時間が「2.5時間未満」と比べて、「5時間以上」の人では肺塞栓症による死亡リスクが2.5倍、統計的にも有意に多いという結果でした。「2.5~4.9時間」の人では1.7倍多い傾向にありましたが、統計的な有意差はありませんでした。

 テレビを長時間視聴する習慣のある人は、足を動かしたり立ち上がったりするなど、同じ姿勢を取り続けないよう注意が必要だと思われます。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。