ダイエットを科学する

痩せたいなら食事制限よりも「急ぎ歩き」で階段上り下り

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「『太る』『やせる』というのは、基本的には食べる量、摂取量と消費のバランスとその微調整能力によります。消費の割に食べる量が多ければ太ります。そうはいっても、単にやせたいからと極端に食べなければ体調を崩します。生活パターンの管理と運動実施で、体に負担をかけずに体形を維持することが大事なのです」

 こう語るのは早稲田大学スポーツ科学学術院の川上泰雄教授だ。

 では、どのような運動をすれば効果的にやせられるのか。川上教授は70キロの体重の人が5キロ体脂肪重を減らすには、どんな運動をすればいいのかを次のように解説する。

「ランニングで1キロ走ることで1キロカロリー消費する。ウオーキングで1キロ歩くことで0・5キロカロリー消費する。この前提で計算すると、5キロの体脂肪重を落とすには、トータルで571キロ、ウオーキングでは1143キロ歩かなければなりません。普段、スポーツをしていない人にとっては1000キロ歩くなど不可能に近い数値です」

 では、これを合理的、効果的に行うにはどうすればいいのか。

「1000キロは歩けなくても、急ぎ足で歩くと消費エネルギーは倍になり、階段などで負荷をかけると消費エネルギーは4倍になります。こうした負荷をこまめにかけると、やせるのにも効果的です」(川上教授)

 効果的運動に関しては、早稲田大学重点領域研究機構持続型食・農・バイオ研究所の田中史子管理栄養士もこう指摘する。

「ただ単にやせればいいというので摂取量を落とすだけでは、10年後には体も肌もボロボロになります。やはりタンパク質やアミノ酸、ミネラルなど総合的に栄養をとり、そして適度な運動でやせていくことが理想的です。しかし、一度、肥満体形になった体をやせさせるには並大抵の努力ではダメ。かといって極端な絶食も体調を壊します。だから、できることから少しずつ継続的に行うことが大事です」

 例えば、急ぎでなければ駅や会社や自宅で、できるだけ階段を使用する。電車では座らない、歩くときは時々大また・速足で……、といった日々の小さな積み重ねが大事だという。これらを持続的にやることで、骨格、皮下脂肪、筋肉の身体組成のベースがしっかりと保たれる。

 頭を使わない運動は、時間の無駄遣いなのだ。