放置でさまざまな不都合が…「顎変形症」はこうして治す

言葉の発音にも影響
言葉の発音にも影響(C)日刊ゲンダイ

 あの大物芸人も、あの有名スポーツ選手も、「顎変形症」かもしれない。悩んでいるなら、治療の手段がある。

 顎変形症は、顔や顎に「歪み」を表す疾患だ。

「人の顔の土台は、上下の顎骨、前頭骨、頬骨、鼻骨などの骨から構成され、普通はほぼ左右対称で、骨同士のバランスが取れています。しかし、顔の重要な部分を構成する上下顎骨の大きさや形に個性の範囲を超えて変形がある場合、顎変形症と診断されます」(東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長の高野伸夫医師)

 顎変形症は、見た目である程度分かる。だから、テレビでしょっちゅう見かける有名人も、もしかしたら顎変形症かもしれない。

「この“見た目で分かる”ことから、『出っ歯』『顎が出ている』『顔が曲がっている』などと周囲からからかわれ、患者の精神にダメージを与えるケースは珍しくないのです」

 その影響は予想以上に大きく、患者の性格形成にまで関与し、社会適応性の低下を来すことがあるともいわれている。

■言葉の発音にも影響

 さらに、顎変形症は、咀嚼や言葉の発音にも関係する。顔や顎の骨が歪んでいるので、当然ながら、噛み合わせも悪い。歯垢がたまりやすく、虫歯や歯周病も起こりやすくなる。

 つまり、顎変形症による不都合は、「見た目」「性格形成」「社会適応」「口腔機能」と、複数範囲に及ぶ。

「顎変形症は骨格の歪みによる噛み合わせの悪さなので、歯列矯正と顎の骨の手術を受けることでこれらの不都合は解消される可能性があります」

 そのため、顎変形症の治療は近年注目を集めており、多くの医療機関で積極的に行われるようになっている。もし、「顎変形症かも」と悩んでいるなら、治療手段があるので、まずは近くの歯科や口腔外科を受診して相談すべきだ。

 そして、顎変形症の原因はさまざまだ。先天的なものと後天的なものに大きく分かれ、後天的なものには成長の過程で出っ歯がひどくなるなど骨の歪みが徐々に出てくるもの、事故やけがで顔に損傷を負って手術後に歪みが出るものなどがある。

「成長の過程で出現する顎変形症の場合、骨の成長がストップする10代後半ごろから診断され、手術が行われます。小さい時に多少噛み合わせがおかしいからといって、全員が治療の対象になるものではありません」

 また、年齢はいくつになっても治療が手遅れになることはない。ある患者は幼少時からひどい受け口が悩みだった。60代で思い切って手術を受け、悪かった発音が非常に良くなった。「娘も顎変形症で、今度連れてくるので治療をお願いしたい」と言うほど喜んでいたという。

 ただし、顎変形症で手術を受ける場合は、「見た目」だけにこだわった治療ではなく、「口腔機能を良くする」ことを目的にしている医師のもとで受けるべきだ。

「治療は基本的に、歯列矯正を行い、その上で手術になります。普通は年単位で時間を要する治療法であり、そのことを十分に説明しない医師も避けたほうがいいかもしれません」

 施設によるが、顎変形症の治療には保険が適用される。

▽顎変形症と顎関節症

「まったく違う病気です。顎関節症は、顎関節の雑音、疼痛、開口障害を来す疾患ですが、顎変形症のように顔の土台をつくる『骨全体』に変形が生じる疾患ではありません。治療法も異なります」(高野医師)

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