死を招く病気は秋に発症する

夏バテから夏風邪をこじらせて移行 「秋の肺炎」が急増中

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 夏と冬では亡くなる人の数が1.3倍も違います。秋はその中間地点。夏と比べて死亡数がじわじわと増えていきます。

 夏と冬で死亡数が大きく異なる病気といえば、真っ先に思いつくのが「脳卒中」でしょう。寒さで血圧が上がりやすくなるため、脳出血や脳梗塞になるリスクがアップするからです。また「心臓病」、とくに「急性心筋梗塞」が頭に浮かぶ人も多いはずです。

 ただ、最近では地球温暖化の影響で夏の暑さが厳しくなったため、これらの病気が夏に増えているという話もよく耳にします。患者数は確かに増えているのですが、それで亡くなる人はむしろ減少傾向にあります。

 脳梗塞の死亡数は、2004年8月には5768人でした。ところが、2014年には半分以下の2586人に減っています。また急性心筋梗塞で8月に亡くなった人も、3017人から2586人に減っています。これらの病気で亡くなる人は、年間を通して減少傾向にあるのです。

 増えているのは、実は「肺炎」です。肺炎による死者は、この10年間で約9万5000人から約12万人に増えました(25%増)。もちろん冬に亡くなる人のほうが多いのですが、10年前と比べて夏から秋にかけての死亡数が大きく増加してきています。対2004年比で、8月は28%、9月はなんと36%、10月は29%も増えました。

 肺炎は、主に細菌やウイルスの感染によって生じるため、体の免疫機能が弱っているとかかりやすくなります。免疫力を高めるには、睡眠をとること、食事でビタミン・ミネラル・タンパク質などを補給することなどが大切です。しかし、8月は暑さで胃腸の働きが弱まり、食欲は停滞気味。しかも、夜のエアコンが苦手という人も少なくありません。暑さで睡眠も不足がちになり、本格的な夏バテに。さらには、秋まで引きずって秋バテになる人も少なくありません。

 とりわけ、高齢者は要注意です。ただでさえ若い人と比べて免疫力が弱いのです。ちょっとした夏バテが引き金になって夏風邪をひき、それをこじらせて肺炎に移行することもあるからです。この時期は体調管理に気を配ってください。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。