独白 愉快な“病人”たち

水前寺清子さんが語る「脊椎管狭窄症」を克服するまで

水前寺清子さんは今年70歳
水前寺清子さんは今年70歳(C)日刊ゲンダイ

 デビューしたての20歳の時に左膝腱脱臼、盲腸と続いたくらいで、大きな手術は2年前の腰の手術ぐらいです。私は人間ドックもこれまで1回しか受けたことがなくて、健康のために養生するとかはまったくしないタイプ。

 NHK紅白歌合戦に出演していた頃は、養生していた森昌子ちゃんのほうが前日に風邪ひいてね。それで「お姉さん~!」って近寄ってくるものだから、「(うつるから)来ないで~」なんて冗談言ったりしていたくらいです。

 20歳の時の左膝腱脱臼は、熊本の小国のステージで転んだのが原因。昔の舞台は段差が多くてステージに草履が引っかかったんです。でもね、その一瞬の間にどうやったらカッコよく転べるかを考えたんですよ。あんまりきれいに3回転して転んだものだから、裏方さんも事故だと気づかず、なかなか幕を下ろしてくれなかったくらい。

 ただ、膝はパンパンに腫れ、立てなくなり、続きは舞台で寝ながら歌ってコンサートを終えました。今でも、小国では寝ながら歌った話が語り継がれているそうです。

 もともと腰痛はありました。リラックスして腰を丸めていると、伸ばすのが痛かったり、その逆が痛かったり。多少、脊椎管狭窄症の兆候は出ていたんでしょうね。

 でも、ステージで着流しを着ている時は、晒を巻いて帯を締め、腰回りをガッチリ固定しているから痛みは感じることもなく、歌うには支障がなかった。

 それが、5年前にステージの階段で転んで左膝靱帯を痛めたあたりから、足をかばうようになって。立っていると両足先が冷たくなり、そのうちしびれるようになって、突然、力が抜けて転ぶことも増えてきたんです。転んでご迷惑をおかけしたくないし、ソワソワ床を見てステージに出るわけにもいかない。

■「立っていると両足先が冷たくなって…」

 2年前、お医者さんに行ったら、腰部脊椎管狭窄症と診断されました。腰の骨が狭窄して足先の神経に触れて、しびれを起こしていたんです。

 手術を勧められ「お願いします!」と即決。躊躇することはありませんでした。私の正装は着流しですから、凛としていなきゃいけないし、「助けて~!」なんて言えませんから。痛みは嫌い。スパッと治したい。そう思って、68歳で手術をしました。

 退院した翌日からはコルセットをして仕事をしました。足のしびれも腰の痛みもなく、毎週土曜、2時間の生番組の司会も元気にやらせていただいています。病後だからと心配するより、「原因を取り除いたから大丈夫!」って考える性質なんです。だから、退院したら腰のことはスッキリ完結。もう心配しません。

 日々の健康のために、心がけていることですか? 何も心がけていないですね(笑い)。実はグータラなんです。家に帰るとダラーっとして、サスペンスドラマを見るくらい。

 食べ物は、昔は肉、肉、肉! 10日間の公演中ずっと肉ばっかりなんてこともありました。最近は魚も食べますけど、やっぱり好きな物を食べたいですからね。量は一度にたくさん食べられないので、ちょこちょこ回数多く食べます。

 気をつけていることといったら、「自分の心と違うことは言わない」ぐらいかな。心にないことを言って、後で考えると病むでしょ。“食生活はペケ、気持ちだけマル”ね。

 昔、「60歳になったら、みんなで海外移住しよう」なんて話していたのに、あっという間に10年も過ぎちゃって。

 そんな約束をしたことすら忘れちゃいました。おかげさまで、今も元気に、楽しく歌手を続けさせていただけているので、このまま行けるところまで行こうと思っています。

▽すいぜんじ・きよこ 1945年、熊本県生まれ。64年、19歳で「涙を抱いた渡り鳥」でデビュー。NHK紅白22年連続出場、司会を4回務める。68年「三百六十五歩のマーチ」でミリオンセラーを記録。現在、「チータと謙二の夫婦歳時記」(BS朝日土曜午前5時半~)、「DO YOU?サタデー」(BSフジ土曜正午~)で司会を務める。