昔から、庶民のあいだでは「秋はがんで亡くなる人が増える」と言われてきました。年配の医師のなかにも、そういうことをおっしゃる先生が結構います。一方、医学的には「がん死に季節性はない」とされています。本当はどうなのでしょうか。
実は胃がんに関しては、秋に死亡が増えることが知られています。たとえば、1970年代に発表された論文には「胃がん(死)は秋(9、10月)にごく低い山を示す」と書かれています。またその理由として「日本の夏は高温多湿でがん細胞の分裂が促進されやすい」ことと、「夏は暑いなりにもちこたえた体力も秋の気候の急変で落ち込む」ことが挙げられています。
高温多湿とがん細胞の分裂が本当に関係しているかは分かりませんが、後の理由は直感的に納得できます。がんといえば胃がんというほど、それで亡くなる人が多かった時代の話ですから、庶民感覚としても受け入れやすかったに違いありません。
死を招く病気は秋に発症する