当事者たちが明かす「医療のウラ側」

さらなる患者負担増で病院にかかりにくくなる

首都圏の50代開業医

 以前から、医師仲間内で“患者さんの数が減っている”ことが話題になっていますが、最近はとくにその傾向が強くなっている気がします。

 今年4月から、診療所等の医療機関からの紹介状がなく大病院を受診すると初診5000円、再診2500円の自己負担が追加されるようになりました。よほど重大な病気でない限り、いきなり大病院の門を叩く患者さんは少なくなり、私たちのような小さな医療機関を受診する患者さんが増えるだろうと期待していましたが、アテがはずれた感じです。

 正直、診療所の経営が不安です。これまでは元気なお年寄りが診療所に通ってくれていましたが、足腰が弱った方が増えて、待合室がさみしくなっています。

 これに追い打ちをかけるのが医療費の値上げです。例えば薬代。いまは、先発薬もジェネリック薬品も保険対象ですが、今後はジェネリック薬品は保険の対象となるものの、先発薬は、同じ効能が期待できるジェネリック薬品との差額分が自己負担になる可能性があります。

 すでに、70歳以上の患者負担上限額の引き上げや介護利用料を現行の1割から2割負担へ、入院時の水道光熱費の負担増などが考えられています。年金の支給額は減らされる一方なのにこれらの値上げが行われれば、患者さんはおいそれとは医療機関にかかれなくなります。今後は、患者さんも「軽い病気は病院に行かずに自力で治す」という風潮になるに違いありません。

 正確な医療情報が手軽に手に入る公的な仕組みがないのに、患者さんを放り出すようなことをすれば、日本人は再び不健康になるのではないでしょうか?