役に立つオモシロ医学論文

スマホで不眠に? 専門誌「Sleep」が9万5000人に調査

いまやスマホは必需品
いまやスマホは必需品(C)日刊ゲンダイ

「消灯後、就寝前にスマートフォンをついつい見てしまう」――。そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。スマホの画面から発せられる光が原因で不眠になるとか、閲覧内容により脳が興奮し不眠になるなんていわれることもありますが、本当のところはどうでしょう。少し古い報告ですが、携帯電話使用と睡眠障害の関連を検討した論文をご紹介しましょう。

 論文は睡眠医学に関する専門誌「Sleep」の2011年8月号に掲載されたもの。日本人の中高生を対象としたアンケート調査です。消灯後、就寝前に通話やメール送信のためにどれくらいの頻度で携帯電話を使用したか、また睡眠時間や睡眠の質などについて、自己報告で回答してもらいました。

 9万4777件のデータを解析した結果、「全く通話やメールをしない人」に比べて、「消灯後に毎日通話する人」は睡眠時間の短縮が21%多く、また睡眠の質低下も22%多いという結果でした。同様に毎日メールする人も、睡眠時間の短縮が15%多く、睡眠の質低下も27%多いという結果になっています。

 この研究は08年時点での調査結果をまとめたものであり、総務省の「平成27年度情報通信白書」によれば、携帯電話普及率は95%を超えているものの、スマートフォンがまだ普及していなかった時代の調査報告です。現在ではモバイル端末の主要な役割が通話やメール送信から、音楽や映像の視聴を含むインターネット閲覧、モバイルゲーム、ソーシャルネットワークの利用等へと大きく変貌しました。夜間消灯後にモバイル端末を使用する機会はさらに増えているかもしれませんし、睡眠障害のリスクはこの結果以上のものかもしれませんね。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。