有名病院 この診療科のイチ押し治療

【プラチナ(高齢者総合)外来】患者・家族とじっくり会話

総合診療内科の橋本正良教授
総合診療内科の橋本正良教授(C)日刊ゲンダイ
埼玉医科大学病院・総合診療内科(埼玉県入間郡)

 今年3月、新たに東館がオープンした。それに合わせて開設されたのが「プラチナ(高齢者総合診療)外来」。高齢者の患者の診断・治療が1カ所で完結するワンストップ外来だ。同外来の責任者を務める総合診療内科の橋本正良教授(顔写真)が言う。

「高齢者は複数の病気を持っていることが多く、認知症を合併している患者さんも多い。そのような場合、患者さん本人だけでなく、ご家族など周囲の方からも十分な時間をかけて症状や服薬情報を聞くことが重要になります。わざわざ新たな外来を設けたのは、通常の診療科ではそれだけ時間をかけて対応するのが難しいからです」

 完全予約制で、初診は60分、再診は15~30分かけて診療する。そのため、医療費(保険診療)とは別に予約料金(初診7000円、再診4000円=税別)がかかるが、総合診療医がトータル的に診断・治療をしてくれる。

「いろいろな病気にかかっていて、複数の病院からたくさんの薬を処方されて困っている」といった問題なども解消できる。

「高齢の患者さんは10種類以上の薬が処方されていることはザラで、2~3種類似た薬が出されている場合があるので、3分の1くらいカットできることが多い。睡眠障害を抱える患者さんも多く、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が重ねて出されていると、ふらつきなどの副作用から転倒する危険性があります」

 認知症の合併があれば薬の処方もするが、ケアマネジャーと連携して在宅ケアの対応もしている。便秘などの排便障害も、本人は困っていても見逃されているケースが多いという。

 同外来を受診した80代前半の男性は、認知症の程度を診る「長谷川式評価スケール」で調べると0点(高度の認知症)。「心疾患」「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「痛風」「COPD」(慢性閉塞性肺疾患)の持病があった。内科と呼吸器科の2施設に3~4年通院していたが、認知症は薬の処方だけで内科主治医から何の指示もない。

 どうしたらいいか分からなくなった家族が患者を連れて同外来を受診し、すぐに介護申請の手続きをしたという。

 患者側の訴えで多いのは、医師に聞きたいことがあっても「聞いてくれない」「言えない」といったコミュニケーション不足。特に臓器別診療科の専門医の場合は、認知症がからんでくると対応が難しいという。

「私たち総合診療医は医学的(バイオ)だけでなく、心理的(サイコ)、社会的(ソーシャル)も含めてトータルに診るのが役割です。専門治療が必要な場合でも、当科には腎臓科、循環器科、消化器科、血液科、呼吸器科、内分泌糖尿病などを専門とする総合診療医が所属するので、ほとんどの高齢者の患者さんは当外来で治療できます」

 同外来の受診は大学病院なので紹介状が必要になるが、紹介状がなくても別途で初診時選定療養費(5000円=税別)を支払えば受診できる。

■データ
埼玉医科大学・毛呂山キャンパスにある本院。
◆スタッフ数=常勤医師16人(うち同外来担当医師=2人)
◆年間初診患者数(2015年度)=5380人(うち65歳以上の割合=約42%)