身近な薬の落とし穴

便秘薬の服用で不整脈につながる場合がある

 腸の動きが悪くなると、便秘になることがあります。多くの場合、野菜による食物繊維の摂取、水分の摂取、運動によって腸を動かすことによって改善しますが、それでも良くならない時は薬を使って対処するケースがあります。

 しかし、便秘薬の中には、思いもよらぬ副作用を起こすものがあるので注意が必要です。

 便秘薬にはいくつも種類がありますが、「大腸を動かし排便を促す薬」が頻繁に使用されます。その中でも、「タケダ漢方便秘薬」は有名で、5歳以上の小児から大人まで幅広く使用されています。

 この薬は、大黄と甘草という2種類の生薬で構成されています。大黄は大腸を刺激することで腸運動を活発にし、便通を促します。甘草は腸内に水分を保持したり、大腸が動き過ぎないようにする作用があります。つまり、大黄と甘草は作用のバランスをとりながら、便秘を改善するように働くのです。

 しかし、飲みすぎると下痢を起こしてしまうため、量の調節に気をつけなければいけません。また、甘草の副作用である低カリウム血症には特に注意が必要です。

 低カリウム血症は、体の中のカリウムが少なくなった状態です。症状として、むくみや血圧上昇が起こりやすく、ひどい場合は不整脈が起こることもあります。甘草の過剰摂取、高齢者、女性で起こりやすいといわれます。

 実際、便秘薬を飲んでいて、少しむくみが気になるからと血液検査をしたら、低カリウム血症になっていた患者さんがいらっしゃいます。

 この患者さんは、すぐに薬を中止したため、大きな問題はありませんでした。

 放置すると、副作用の症状が悪化する危険があります。薬を飲み始めて違和感があれば、早めに医師や薬剤師に相談してください。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。