顔ペロペロも危険 胃がん招く細菌は“愛するペット”が感染源

どんなにかわいくてもキスはやめて
どんなにかわいくてもキスはやめて(C)日刊ゲンダイ

 ペットが胃がんや胃炎の原因になるかもしれない。犬や猫を飼っていて、胃の調子が優れない人は注意した方がいい。

「ヘリコバクター・ピロリ菌」が胃がんの大きな原因になっていることは、近年、一般にも広く浸透してきている。ピロリ菌に感染していると、慢性胃炎、萎縮性胃炎、鳥肌胃炎を引き起こし、胃の粘膜が傷つけられることで胃がんにつながる。

 そのため、ピロリ菌検査を行って、陽性だった場合は除菌をする人も増えている。

 しかし、ピロリ菌検査が陰性にもかかわらず、慢性胃炎や胃がんにかかるケースがたくさん報告されてきた。その原因のひとつが「ヘリコバクター・ハイルマニ」という細菌の感染だ。

 日本消化器病学会専門医の江田証氏(江田クリニック院長)は言う。

「ピロリ菌が属しているヘリコバクター属の細菌は、これまで36菌種が確認されています。その中の『ヘリコバクター・ハイルマニ』という細菌に感染していると、ピロリ菌が陰性でも慢性胃炎や鳥肌胃炎を引き起こし、胃がんの一因になることが分かってきました。ハイルマニは、犬、猫、ウサギ、ブタなどの動物から人間に感染します。ハイルマニに感染している人の70%にペットや家畜などの動物との濃厚な接触があったという報告もあります」

■放置すれば命に関わる危険も

 日本人を対象とした調査では、ピロリ菌陰性で慢性胃炎を起こしている人の60%、MALTリンパ腫の人の60%、胃潰瘍の人の33%がハイルマニに感染していた。中でも多かったのは、同じケースで鳥肌胃炎を起こしている人で、実に71%がハイルマニに感染していたという。

「鳥肌胃炎は女性や若年者に多く見られる特徴的な胃炎で、スキルス性などの悪性度が高い未分化型がんのリスク因子とされています。胃の表面にブツブツとした顆粒状の盛り上がりが広がり、毛をむしりとった後の鳥の肌にそっくりなことから名付けられました。ピロリ菌やハイルマニに感染した細菌を退治しようと過剰反応した大量のリンパ球が胃の粘膜に集まり、顆粒状の隆起をつくります。過剰に集まったリンパ球は自分の胃の粘膜まで傷つけてしまい、激しい炎症を起こします。そのため、胃がんになりやすくなるのです」

 ピロリ菌が陰性でも鳥肌胃炎になっていたら、早い段階でハイルマニの検査と除菌をした方がいい。ハイルマニはまだ培養することができず、血液や尿や呼気から感染の有無を調べることができない。内視鏡で胃の組織を採取して顕微鏡で見たり、遺伝子検査を行う必要がある。ピロリ菌検査に比べて手間がかかるが、放置すれば命に関わる場合もあるから、面倒くさがってはいけない。

「ハイルマニの除菌には、ピロリ菌の除菌で使われるものと同じ種類の抗生物質が有効です。ただ、ピロリ菌に感染している人はハイルマニには感染しにくいし、ハイルマニに感染している人はピロリ菌には感染していないケースが多い。そのため、ピロリ菌が陰性の場合はハイルマニも見逃され、適切な除菌も行われません。ピロリ菌が陰性でも胃に病変がある人は、ハイルマニの検査を受けた方がいいでしょう」

 また、ハイルマニの感染を予防することも大切だ。

「犬、猫、ウサギといったペットを触ったりなでたりする分には問題ありませんが接触した後はしっかり手洗いをしてください。また、顔をペロペロとなめさせたり、キスをしたり、口移しで食べ物を与えることは控える。自分が使っている箸を使って、直接食べさせるのも危険です。排泄物を処理する時は手袋を使い、処理が終わったらしっかり手洗いをしてください」

 ペットを飼っていて胃の異常が続いている人は、ハイルマニの検査も考慮すべし。

関連記事