天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ベテラン医師でもベトナムの医療発展に貢献できる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 8月の中旬にベトナムに足を運び、現地の病院や医療体制を視察してきました。以前、ベトナムの要人の心臓手術を執刀したことがあり、その際に知り合った関係者から、「実際に視察して、ベトナムの医療に対するアドバイスが欲しい」という要望があったのです。

 現在、ベトナムでも手術は一通り行われていますが、決してレベルが高いとは言えません。そのため、要人や富裕層はシンガポールや日本へ出向いて治療を受けています。しかし、医療体制を整えたり、治療経験を蓄積しながら、将来的にはベトナム国内で治療を完結させたいと考えているといいます。ベトナムで近代的な最新医療を行うことができるのか、そのために何が不足しているのか、どんな教育が必要なのかといったことについて、意見を求められたのです。2泊3日のスケジュールでハノイにある4つの病院を回ったのですが、やはり、現状ではなかなか難しい印象を受けました。4つの病院のうち、なんとか可能かもしれないという施設は1つだけでした。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。