天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ベテラン医師でもベトナムの医療発展に貢献できる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 さらに、そうした機器を扱える人材も不足していますし、人材を育成するための教育も必要です。そのため、ベトナムの関係者は、これまでも多くの援助を行っている日本に対し、物的支援だけでなく人的支援も本腰を入れて欲しいと願っているのです。

 対してこれまでの日本は、「最新の医療を受けたいのなら、メディカルツーリズムで日本まで来ればいい」という方向に進んでいました。しかし、これからはもっと大局的な観点から、ベトナムなどの医療後進国に出向き、現地の医療の発展に力を注ぐ医師がもっと増えてもいいのではないでしょうか。

 その点、ベトナムは非常に適した環境が整っている印象です。日本からベトナムまでは、飛行機で5時間前後です。今後はもっと時間が短縮される可能性もあります。そうなると、新幹線を使った場合の東京―広島・岡山くらいの“距離”なので、日帰りも可能です。玄関にカギをかける習慣がないほど治安も良く、物価も安い。昭和40~50年ごろの日本と同じような雰囲気を感じます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。