死を招く病気は秋に発症する

要注意の季節に 慢性的な「天気痛」は死亡リスクを高める

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 天候に左右される慢性の痛みを「天気痛」と呼びます。気温や湿度などに反応して、痛みが増したりやわらいだりしますが、とりわけ気圧との関係が深いことが解明されつつあります。

 天気痛の代表は「関節リウマチ」です。昔から「天気が悪くなるとリウマチが痛む」といわれてきましたが、近年の大規模な疫学研究からも、気圧が下がるほど(天気が下り坂になるほど)リウマチの痛みや腫れが強まる傾向にあることが確認されています。また、気温が低いほど痛みが出やすいという研究結果もあります。

「片頭痛」も天気痛の代表格です。脳内の太い血管が急激に拡張し血流が増えることによって引き起こされるといわれています。なぜ血管が拡張するかは諸説ありますが、やはり気圧変化が大きな原因と考えられています。

 耳の奥にあるセンサーが気圧の変化を感知すると、その情報が自律神経に伝えられます。自律神経は内臓や血流を制御する神経で、活動期に働く交感神経と、休息時に働く副交感神経の2系統に分かれています。気圧が低下すると副交感神経が優位になり、体をリラックスさせるように働くのですが、同時に脳の血管も広げてしまうため、片頭痛の引き金になるという説が有力です。

「雨が近づくと古傷が痛む」という話もよく耳にします。がんが増え続けている昨今では、とくに手術痕が何年経っても痛むという患者が目立ちます。

 気圧が下がって副交感神経が優位になると、体内の「ヒスタミン」と呼ばれる物質が増加します。ヒスタミンは血圧を下げ、内臓を構成する平滑筋を弛緩させる作用を持っています。それによって、体を休める方向にもっていくわけですが、同時に炎症反応を刺激してしまうことが知られています。

 治っているようでも古傷の奥には小さな炎症が続いている場合が多いため、ヒスタミンの刺激を受けて痛みが増すのだと考えられています。また、傷痕の皮膚表面は冷気に敏感になっていることが多く、急な寒さを痛みとして感じてしまいます。

「痛みは早期死亡リスクを高めるのではないか」という議論が医学会にはあります。

 秋は台風や秋雨前線の影響で、気圧が急激に下がることがあります。しかも、気温は冬に向かって下がり続けます。天気痛には要注意の季節です。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。