看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

口の渇き、吐き気などの症状は「高カルシウム血症」かも

 前回に引き続き「オンコロジックエマージェンシー」を取り上げます。

 がんに関連した原因で、救急対応を必要とされる致命的な状態に陥ることです。たとえば「吐き気」といったひとつの症状でも、「がんそのものによる症状」「がんの治療に関連した症状」、既往歴などの「がん以外の症状」が複合的に影響している場合があります。救急対応が必要になる前に、早期発見・早期対応することが、とても大切です。

 がん患者さんが起こしやすいオンコロジックエマージェンシーに、「高カルシウム血症」があります。血液中のカルシウム濃度が高くなることを指し、「腎機能の低下によるカルシウム排泄の減少」「骨転移などにより骨破壊の進行」「甲状腺ホルモンの過剰分泌によるもの」などが原因になります。

 高カルシウム血症は症状がないことがよくあるのですが、初期には、口の乾きや食欲不振。消化器症状として、吐き気、便秘、食欲不振、胃部不快、腹痛などが表れます。脱力や疲労感、多尿なども見られ、重篤な場合には意識障害が起こることもあります。

 これらのサインを患者さんやご家族が受け取り、医療者へ伝える場合、症状に乏しかったり、特に初期でほかの疾患の症状と鑑別がつかないケースがあるでしょう。しかし、がんの種類や骨転移の有無、定期的な採血を実施しているかどうかなどが、「相談すべきかどうか」「受診した方がいいのか」などの対策を決める目安になると思います。

 高カルシウム血症は、早期に対応すれば改善を期待できる病態です。笑顔でがん治療を続けるために、ぜひ押さえておいてください。