医者も知らない医学の新常識

英男性はバグパイプで呼吸困難に 楽器で肺炎になるのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今年の「ソラックス(Thorax)」という医学誌に、興味深い論文が掲載されていました。「バグパイプ」を趣味で毎日吹いていた男性が、原因不明の咳や痰、呼吸困難に苦しみ、悪化して亡くなってしまったのです。

 男性は英国在住でしたが、一時オーストラリアに住んでいて、その頃はバグパイプを演奏しなかったところ、その時期だけは症状が出ませんでした。そして、バグパイプの内部から数種類のカビが検出されました。どうやらこのカビが、男性の呼吸困難の原因だったようなのです。

 しかし、これは「カビによる肺炎を起こした」ということではありません。カビの成分のタンパク質に、一種のアレルギー反応を体が起こしてアレルギー性の肺炎になったのです。一度、そうした反応が成立してしまうと、少量のカビを吸い込むだけで、再び重い症状が出現します。これを「過敏性肺炎」と呼んでいます。

 これまでも、「バグパイプ」以外に「トロンボーン」や「サクソホン」の演奏者で、同じような報告があります。楽器の演奏をやめるか、楽器を洗浄してカビを除去すれば、症状は改善します。しかし、いったん悪化してしまうとステロイドなどの治療が必要になりますし、時には命に関わることもあるのです。

 吹奏の楽器は肺活量を増やし、本来は呼吸機能を高めるものですが、その内部は不潔であることも多い。楽器演奏後の呼吸困難には、注意が必要なようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。