夏バテ胃腸は秋口に立て直せ

不調を引きずる人は「機能性ディスペプシア」を疑う

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 食欲がない。食べてもすぐにお腹がいっぱいになって食べられないため痩せてしまう。胃が重い。胃がむかむかする……。夏場からこうした胃の不調に悩み、医療機関で胃カメラ検査を受けたのに、医師からは「異常ありません。気のせいでしょう」と突き放されてしまった……。そんな患者さんは少なくありません。

 異常がないと判断された人でも、実は病気だったというケースがあります。「機能性ディスペプシア」と呼ばれる病気です。「ディスペプシア」とは胃の不快な症状を指す言葉で、内視鏡検査で目に見える異常がないにもかかわらず、胃の痛み、胃もたれ、すぐにお腹がいっぱいになってしまうといった症状が表れます。

 一般的に、病気は大きく分けて2種類あります。ひとつは、がんなどの腫瘍がある、潰瘍や炎症があるなど、原因が目に見える病気(器質的な病気)。もうひとつが、内視鏡や超音波やCTなどの検査で調べても、目に見える異常が見当たらない病気(機能的な病気)です。機能性ディスペプシアは、まさに後者に当たります。異常が見当たらないから「気のせい」だと言う医師は、ヤブ医者と思っていいでしょう。

 この機能性ディスペプシアの発症には、「夏休み」が関わっているケースも考えられます。

 お盆休みに帰省するなどして、家族や親戚と昔話をする機会があった人もいるでしょう。もちろん楽しい時間を過ごせた人は多いでしょうが、中には、忘れていたかったつらい記憶を思い出してしまうケースもあります。親子の葛藤、幼少期のトラウマ、嫁姑のいざこざ……。家族や親戚との会話から、抑圧してきた記憶が蘇ってしまう人もいるのです。

 機能性ディスペプシアは、そうしたつらい記憶やトラウマを持っている人に多い病気です。主に①ストレス②ストレスによる胃の膨らみの悪さ③胃酸に対する知覚過敏――という3つの原因で発症するからです。

 機能性ディスペプシアに対しては、胃の膨らみを改善する薬や、胃酸を抑えるタイプの胃薬などが効果的です。また、胸焼けしない程度の、ごく少量の唐辛子を長期間にわたって摂取すると、症状が改善することも分かっています。

 夏から秋にかけて胃の不調が続いているのに検査で異常がなかった人は、機能性ディスペプシアについて理解のある医師に相談しましょう。適切な対処を行えば、しっかり立て直すことができるでしょう。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。