これで痛みを取り除く

【歯周病】歯みがき粉の効能に過度な期待は禁物

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人類史上、最も罹患(りかん)者の多い感染症とされる「歯周病」。虫歯と並ぶ歯の代表疾患だが、症状の表れ方がまったく違う。初期の段階では、何もしなくても痛い「自発痛」が表れることはほとんどなく、痛みを感じるとしても相当進行してからだ。日本歯科大学生命歯学部・歯科補綴(ほてつ)学の五味治徳教授が言う。

「歯周病は、歯肉だけに炎症が起きている状態の『歯肉炎』と、さらに悪化して歯を支える骨(歯槽骨)が溶かされる『歯周炎』に大別されます。主な原因は、歯の周りにこびりついたプラーク(細菌の塊)です」

 歯肉炎では、「歯肉が赤みを帯びる」「歯肉が腫れぼったい」、歯みがきなどの少しの刺激でも「歯肉から出血する」が典型的な症状だ。さらに歯肉の炎症が続くと、歯と歯肉のすき間の「歯周ポケット」が広がり、深くなっていく。歯周病菌が歯周ポケットの奥の方に入り込み、ジワジワと歯槽骨を溶かしていくのだ。

「歯周炎に移行すると、歯肉が化膿性の腫れを繰り返したり、歯肉が下がって歯がグラついてきたりします。こうなると、歯肉を押したり、物を食べて歯が揺れたときに歯肉に鈍い痛みを感じることがあります」

 炎症が歯の根っこの方まで及ぶと、自発痛や噛むと痛い「咬合(こうごう)痛」の原因になるという。いずれにしても、歯肉に少しでも痛みを感じるようなら歯周病が相当進行していると思った方がいい。

「歯周病で痛みがある場合、歯周ポケットにジェル状の抗菌薬を注入する治療を行うこともあります。しかし、これはあくまで対症療法にすぎません。歯周病の治療の基本は、歯科によるスケーリング(歯石除去)や定期検診での口腔衛生指導と、家庭での毎日のブラッシングによるプラーク除去になります」

 歯肉炎の状態なら数日で改善することがあるが、歯周炎になっていると進行を止めることが治療の目的になる。歯肉を切開して歯周ポケットを掃除しやすいようにしたり、最近では歯槽骨の再生治療も行われている。ただ、効果は骨の欠損形態によって違ってくるという。

「抜歯は極力避けますが、最終的には『食べる』『しゃべる』の機能や、『見た目』などの口の中の総合的な状態によって検討することになります」

 歯周病の予防としては歯みがき粉に頼るのではなく、毎日の正しいブラッシングによりプラークの除去を行うことが大切であるという。