夏バテ胃腸は秋口に立て直せ

過敏性腸症候群には注目の「低FODMAP食」が効果的

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 夏場から胃の不調に悩み、医療機関で胃カメラ検査を受けたのに異常なし。しかし、実は「機能性ディスペプシア」という病気だったというケースを前回、紹介しました。これと同じようなケースが他にもあります。

 夏を過ぎたあたりから、すぐに下痢してしまう。頻繁にお腹が痛くなる。重い感じが続いている。医療機関で大腸内視鏡検査を受けたのに異常は見当たらず、医師は「問題ない」とあっさり……。こんな人は「過敏性腸症候群」かもしれません。この病気は、内視鏡で目に見える異常がないのに、下痢、腹痛、お腹のゴロゴロ(腹鳴)、ガスが増える、お腹が張るといった症状が表れます。日本では13・1%がこの病気を持っているという報告もあります。

 過敏性腸症候群は、機能性ディスペプシアと同じくストレスやトラウマが発症や悪化に関わっています。高学歴、高収入、社会的地位の高い人に多いのも、ストレスや緊張が関係していることの証しでしょう。夏休み期間中に大きなストレスを受けたり、つらい記憶を思い出してしまった人が発症したり、悪化するケースも考えられるのです。

 過敏性腸症候群を改善するには、食事を見直すのが効果的です。最近は「低FODMAP食」と呼ばれる新しい食事療法が注目されています。豪州のモナッシュ大学で開発されたもので、FODMAPというある種の糖質を避ける食事法です。

 FODMAPとは、「発酵性」の「オリゴ糖類」「二糖類」「単糖類」「ポリオール類」のアルファベット表記の頭文字に「AND」を加えて並べたもの。これらの糖質は小腸での吸収が悪いため、摂取すると小腸の中で濃度が高まります。すると、小腸の中で浸透圧が高まり、大量の水分が小腸内に引き込まれて小腸が水浸しになってしまいます。そのため、小腸の運動が高まりすぎてゴロゴロしたり、下痢の引き金になるのです。

 また、FODMAPは小腸での吸収が悪いため大腸まで到達し、大腸内の腸内細菌と反応して異常発酵を起こし、水素ガスがたくさん生産されます。過剰な水分とガスによって、腹痛、下痢、お腹の張りなどが生じるのです。

 高FODMAP食を避けるには、乳糖、果糖、フルクタン、ガラクタンなどのオリゴ糖類を含む小麦、タマネギ、レンズ豆を控えてください。高乳糖食のヨーグルトや牛乳、高果糖食のハチミツ、リンゴやモモなどの果物の摂取量も減らしたほうがいいでしょう。

 低FODMAP食を3週間続けると、8割の人が症状の改善を実感するという報告があります。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。