「疲労回復」という言葉があるように、体の疲れは決して健康的な状態でないことは常識的にも理解しやすいでしょう。しかし、疲労を感じているからといって、それがどの程度体に悪いのかを改めて考える機会は、そう多くないように思います。
「疲労と死亡リスク」の関連を検討した観察研究の論文が、生物医学分野のオープンアクセスジャーナル「BMC Medicine」誌(2016年8月20日付)に掲載されました。
この研究は英国の大規模コホートデータを用いて40~79歳の男女1万8101人を対象としたものです。被験者に対して疲労に関するアンケート調査を行い、その重症度を4段階に分類。最も疲労の重症度が低いグループを基準に、疲労と死亡リスクの関連を平均で16.6年にわたり検討しました。
なお、結果に影響を与えうる「年齢」「性別」「婚姻状況」「喫煙状況」「教育水準」「アルコール摂取」などの因子で統計的に調整して解析しています。
その結果、疲労の重症度が4段階中最も高い人たちは、最も低い人たちに比べて全死亡のリスクが40%、心臓病による死亡のリスクが45%統計的にも有意に増加しました。
この研究結果から「疲労と死亡の因果関係を決定づけることができるか」というと、なかなか難しいところです。「疲労」をどう測定するかで結果も変わってきてしまうでしょうし、そもそも疲労を感じやすい人は病気がちかもしれません。
とはいえ、疲労は体に良い影響を与えないであろうことは直感と矛盾しませんし、それが死亡リスクを上昇させる可能性まで示唆されているとはやや驚きです。忙しい時ほど休養が大切。少なくとも、そうはいえるでしょう。
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