ダイエットを科学する

「入浴でやせる」は間違い

「世間では“入浴にダイエット効果がある”などといわれているようですが、間違いです。お風呂に入るだけでやせるなんてことはありません」

 こう言うのは、医師であり「お風呂博士」の異名も持つ東京都市大学人間科学部の早坂信哉教授だ。

 早坂教授に言わせると、「40度、10分間の全身浴」あるいは「半身浴」などにおける消費エネルギー量は、それぞれ2.8±0.3キロカロリー、1.6±0.2キロカロリー(名古屋大の研究)。何もしない平静時と比較しても、ほとんど大差がないという。また、「42度、5分間」の入浴時のエネルギー代謝率(平静時代謝率1METS)も1.2~1.3METSで、平静時と比較してさほど代謝率が上がっているわけではないという。

 それも当然だ。スポーツにダイエット効果があるのは、自らの脂肪を燃やしてエネルギーを消費するから。一方、入浴は他から熱を与えられるだけで自らエネルギーを消費しない。

■大事なのは気持ちよく体を動かせるようになること

 それではなぜ、入浴は「ダイエット効果がある」「やせる」といわれているのか。

「単に入浴すると汗をかいて体の水分が抜け、一時的に体重が減るからです。サウナに10分間入ると平均490ミリリットルの水分が失われます。41度の風呂に15分間入ると800ミリリットルの水分が抜けます。しかし、これは一時的なもので、水分補給すればすぐに元に戻ってしまいます」

 それでは、風呂はまったくダイエット効果ゼロなのか。一概にそうとは言えないと、早坂教授が言う。

「ストレートな効果はありませんが、入浴は間接的に大きなダイエット効果を生み出すのです」

 例えば風呂に入ると血流が抜群に良くなる。それが疲労回復、体にたまった乳酸を取るのに大きな効果を出すのだという。

「また、スポーツや勤労でこわばった筋肉のコリ、さらには筋などを柔らかくする効果があります。そのおかげで、関節の可動域が広がったり、体が柔軟になったりします。その結果、次に運動したり働いたりする際、全力であたることができる。その結果、より大きなエネルギーが消費されることとなり、ダイエットにつながるのです」

 入浴には、精神的なリフレッシュ効果もある。これもまた、体を気持ちよく動かすことにつながり、より大きなエネルギー消費をもたらすことによって、ダイエットが進むことになる。

 つまり入浴は、ストレートな効果よりも波及的なダイエット効果が大きいということだ。

「ですから、ダイエットしたい人にとって大切なのは入浴中に汗をかくことではなく、体のこわばりを和らげ、リラックスすることなのです」