吉永小百合さんも要注意? 手首の骨折は“ドミノ”のサイン

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 女優の吉永小百合(71)が今年2月、転倒して手首を骨折したと報じられた。これはある重大病へつながる「第1段階」かもしれない。

「日本アカデミー賞」の授賞式にギプスをつけて登場した姿を見て、胸を痛めたサユリストも多かったのではないか。

 しかし違う意味で、骨粗鬆症治療の専門家は注目した。都内のある整形外科は「あの吉永小百合も、骨粗鬆症かもしれない」と話す。一度骨折を起こした人はその後も繰り返しやすい。高齢者の場合、それが骨粗鬆症を示している可能性が高いからだ。

 そして、骨粗鬆症につながる骨折で最初に起こりやすいのが「手首」で、椎体、腕、大腿骨近位部(脚の付け根)と続く。日本骨粗鬆症学会理事で、鳥取大学医学部保健学科教授の萩野浩医師は、「手首の骨折から連鎖を起こす『骨折ドミノ』」と指摘する。

 骨粗鬆症は、骨の強度が低下し、骨折のリスクが高くなる疾患だ。

 そのため、骨折ドミノを起こすのだが、骨強度低下は骨密度だけが問題なのではなく、骨の微細な構造や骨代謝回転などで決まる「骨質」も関係している。その割合は、骨密度7、骨質3。骨の強度が落ちれば、健康な人なら何てことのない「転倒で手をついた」だけでも骨折に至る。

 萩野医師によれば、「骨折程度で済んでよかった」と安心するのはとんでもないという。骨折、中でも大腿骨近位部骨折を起こすとADL(日常生活動作)が低下し、認知症のリスクが高くなり、死亡率も高くなる。

「研究では、骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折はその他の骨折より明らかに死亡率が高いという結果も出ているのです」

■大腿骨周辺の骨折で死亡率急上昇

 超高齢化社会で、骨粗鬆症患者は急増している。ところが、1300万人ともいわれる骨粗鬆症患者のうち、治療を受けているのは20~25%ほど。自分が骨粗鬆症だと認識していない人も多い。

 加齢とともにだれもが骨の強度は落ちるので、自分がどの段階にいるか、積極的な治療を受けるべきかどうか、まず知ることが先決だ。

 骨粗鬆症のサインとしては、「重いものを持つと腰が痛む」「立ち上がる時に腰が痛む」「起き上がる時に腰が痛む」「身長が縮んできた」「背中が曲がってきた」「転倒してしまった」などがある。

 しかし、腰痛は「以前からずっと」という人も多いだろう。高齢者といわれる年代になっても気持ちや見かけが若々しい人がほとんどの時代、該当する項目があっても、「まさか、自分が」と打ち消す人もいるはずだ。

 ひとつ、確実なポイントは、「これまでに骨折を起こしたことがあるかどうか」をチェックすること。

 さらに、「閉経後の女性」「喫煙習慣」「アルコール摂取(3単位以上=日本酒なら3合以上、ビールなら中瓶3本以上)」「母親が骨粗鬆症」のいずれかに該当するようであれば、70歳、80歳までいかなくても、50歳を越えたら骨密度を測定する。いずれも該当しなければ、65歳以上で測定する。骨質は測定できないが、骨密度で骨粗鬆症かどうかが分かる。

「骨粗鬆症の進行は、薬物治療で抑えられます。薬の副作用が強くて拒否される患者さんもいますが、服用のメリットとデメリットを比較すると、はるかにメリットの方が大きいのです」

関連記事