看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

ありふれた症状が重篤な疾患の兆候に

 だれもが経験するありふれた症状が、がんの患者さんでは重篤な疾患に至るサインとなるケースがあります。

 今回は「高アンモニア血症」を取り上げます。高アンモニア血症とは、体内のアンモニアが分解されず蓄積するもので、初期症状として、倦怠感、疲労感、食欲不振、吐き気などがあります。

 がんでは、肝臓がんや肝臓に転移や病変がある場合に起こりやすくなります。腎機能障害、脱水、感染症、便秘も危険因子であり、進行すると意識障害を引き起こします。医療関係者はもちろんこれを理解していますが、実際はチェックが難しいといえます。

 がんで緩和ケアが主体となる時期は、腎機能や肝機能が低下したり、鎮痛薬の副作用で便秘を経験される患者さんが少なくなく、高アンモニア血症のリスクが高くなります。しかしこの時期、がんの症状としても倦怠感、疲労感、食欲不振、吐き気などが多く、高アンモニア血症との区別がつきにくいのです。

 また、緩和ケアの患者さんでは、高アンモニア血症の発見につながる採血の回数や機会が減ります。「だから、見過ごされている患者さんも多いのではないか」と、以前一緒に働いていた医師が研究に取り組んでいました。

 終末期のがん患者さんに関する高アンモニア血症の実態や原因についてはまだ報告が少なく、どの段階まで治療をするのかというガイドラインはないのが現状です。

 しかし、意識障害まで進行すれば、残された生活の質にも影響が及ぶことは間違いありません。

 緩和ケアというと、「もう何もすることがない」イメージがまだ根強いですが、そうではありません。苦痛を和らげ、軽くし、なくすための手段を考え講じることが緩和ケアです。少しでも苦痛が和らぐ手段を探すための方法としては、必要最小限の採血がいちばん身近なものといえるかもしれません。