医者も知らない医学の新常識

脳トレはそれ自体では効果がない?

 皆さんはパソコンソフトやゲーム機器を使った脳のトレーニング、いわゆる「脳トレ」をやっていますか? 2005年ごろにゲーム機器を利用した脳トレソフトが大流行したので、その時だけ熱心にトレーニングに励まれた方も多いのではないでしょうか。

 米国でも日本と同じように脳トレが流行しています。頭が良くなったり、認知症が予防されることを期待してトレーニングに励んでいるのですが、実際には、どのくらいの効果があるのでしょうか。

 米国で脳トレが流行したのは、2008年、一流科学誌「米科学アカデミー紀要」に、「いくつか前の数字などを思い出す」という簡単な脳トレによって、新しい環境に対応して問題を解決するような高度な知能が短期間で向上したとの画期的な結果が報告されたからです。ところが、今年の同じ米科学アカデミー紀要に、「これは脳トレ自体ではなく、一種の暗示の効果ではないか」という論文が掲載されました。脳トレの前に「この脳トレで知能が高くなります」という紙を見せると、実際に脳トレで知能が向上し、別の内容の紙を見せると知能は向上しなかったのです。

 要するに、脳トレで知能が上がったのではなく、上がると信じて脳トレをしたので効果があったのです。どうやら、賢くなる一番の方法は、自分は賢いと信じることにあるようです。

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。