有名病院 この診療科のイチ押し治療

【義肢・装具外来】下肢切断の半数以上は血管障害で足を失った人

右は田中清和部長
右は田中清和部長(提供写真)
JR東京総合病院・リハビリテーションセンター(東京都渋谷区)

 同院は、もともとは旧国鉄の職員や家族を対象とした「鉄道病院」として開院した経緯がある。昔は、業務災害により不幸にして腕や足を切断する職員も少なくなかった。そのため同センターは、伝統的に専門性の高い義肢装具の診療とリハビリテーションを提供してきた。一般病院になったいまも国内有数の実績を誇る。同センターの田中清和部長が言う。

「下肢切断では、労災事故をふくめた外傷の割合が減少する一方で、近年増えているのは、糖尿病性壊疽や、閉塞性動脈硬化症の悪化で下肢を切断する高齢の患者さまです」

 外来受診の9割以上は他院からの紹介だが、その半数以上は血管障害で足を失った患者だという。

 義肢(義手、義足)といっても種類が多く、値段もピンキリ。義足の場合、切断レベルによっても診療で必要とされる技術が異なる。同外来は、ほとんどの義肢に対応できる数少ない施設だ。

「膝より下の『下腿切断』の義足に対応できる病院は比較的多いのですが、膝上の『大腿切断』や『股関節離断』の義足では専門性の高い施設でないと対応できません。義手の場合も、手が動く(物を挟める)タイプに対応できる施設は限られます」

■最新の電動義手も扱う

 義足の値段は、一般的に下腿切断で50万~60万円、大腿切断で約80万~100万円する。膝関節の部分がコンピューター制御された「膝継手」では、200万~600万円するものもある。これらの費用が労災保険(全額支給)や障害者総合支援法の助成(原則1割負担)の適用になるかは個々の患者によって違うという。

「それぞれの患者さまに、どのような義肢を勧めるかも当外来の役割です。医師、理学療法士(義足の場合)、作業療法士(義手の場合)、義肢装具士の3人がチームになって適応を決めています」

 若い患者であれば可動能力や耐久性の高いものが勧められるが、スポーツ用の義肢は全額自費になる。基本的に同外来が対象としているのは、日常生活に必要な更生用義肢や仕事で用いる作業用義肢だ。

 義肢製作の流れはこうだ。切断・抜糸後、2~4週間の間に入院し、切断部分を包帯やシリコーンでしめる「断端訓練」を行いながら、仮義肢を作り、装着歩行訓練を行って日常生活動作獲得の後、退院となる。その後に、外来で本義肢を作り、外来で1~6カ月おきにメンテナンスを行っていく。

 同外来は労災保険が支給する「筋電義手」の評価・訓練医療機関でもある。これは残った腕の筋肉の電気信号をひろって、手を握る・開く機能を代替する最新型の電動義手。扱っている施設は全国でも数少ないという。

「紹介状があれば、いま使っている義肢・装具に違和感があるような患者さまの相談に応じることも可能です。特に膝より上の義足や義手を得意とするので、困っているのであれば、きっとお役に立てると思います」

■データ
旧国鉄職員の「鉄道病院」として開院。分割民営化に伴いJR東日本の直営病院になる。
◆スタッフ数=常勤医師3人、非常勤医師1人
◆年間患者数(2015年)=実患者数102人、延べ患者数415人
◆同外来診療日=月・水・金