視覚障害招く5つの病気は2年に1回の眼科検診で早期発見

失明を36%減らせる
失明を36%減らせる(C)日刊ゲンダイ

 PCやスマホが当たり前の時代になり、現代人は目を酷使し続けている。そうした生活習慣の変化に高齢化も相まって、日本では視覚障害を抱える人が増えている。日本眼科医会によると、2030年には200万人に達すると推定されている。光を失う前に、対策が必要だ。

「視覚障害」とは、視力や視野に障害があり、生活に支障を来している状態をいう。

 世界共通の明確な基準はないが、「失明」と「ロービジョン」のいずれかを抱える場合を指すことが多い。良い方の目の矯正視力を基準にして、米国では良い方の視力が0・1以上0.5未満は「ロービジョン」、良い方の視力が0.1以下なら「失明」とされている。

 日本では、視覚障害の原因になっている病気が5つある。①緑内障②糖尿病網膜症③変性近視④加齢黄斑変性⑤白内障で、これらだけで視覚障害の原因疾患の4分の3を占めている。失明も、男性の46%、女性の53%はこれら5つの病気が原因だった。

 失明やロービジョンを防ぐためには、5つの病気の早期発見、早期治療が必要になる。そのために重要なのが、定期的な「眼科検診」だ。

 杏林大学医学部眼科学教授の山田昌和医師の調査によると、成人眼科検診によって5疾患の発見率がアップすると、緑内障による失明が45%減少するという。同じく、加齢黄斑変性で41%減、変性近視で24%減、糖尿病網膜症で17%減、白内障で4%減となり、全体で失明を36%も減少させることができると予測している。

■一般的な検診を受けるだけ

「これら5つの病気は、中高年以降に発症するケースが多く、視覚障害者の7割は60歳以上です。また、病気の発症から視覚障害が発生するまでの期間が比較的長い場合も多いので、失明を減らすには40歳から定期的な眼科検診を始め、70歳までに4~5年に1回は検査を受けるだけでも効果的です」(山田教授)

 ただし、緑内障と加齢黄斑変性は、病状が進んで視野が欠けたり視力が落ちてしまうと、治療しても元には戻らない。

「そのため、悪化しないうちに適切な対処を行い、それ以上は進行しないようにして機能を維持することが大切です。早期発見、早期治療には、2年に1回は検診を受けるのが望ましい」(山田教授)

 これら5つの病気を発見するには、一般的な眼科検診で行われるような検査を受けるだけでいい。「視力検査」「眼圧検査」「眼底検査」「細隙灯顕微鏡検査」を行えば、病気があるかどうか大抵は判断できるという。

 何度も特別な検査を受けなくて済むので、患者はそれほど手間がかからない。

「細隙灯顕微鏡検査は、細隙灯と呼ばれる拡大鏡を使って光を目に当てて角膜や水晶体などを調べるもので、白内障かどうかが分かります。緑内障、糖尿病網膜症、変性近視、加齢黄斑変性は、いずれも網膜・視神経の病気なので、眼底写真を撮影すれば分かります。これらの検査で異常があれば、さらに詳しい精密検査を受ければいいのです」(山田教授)

 いずれの検査も健康保険が適用されるため、3割負担なら2000円前後で済む。失明のリスクを大幅に減らせることを考えれば、安いものだ。

 5つの病気は、いずれも進行中は痛くもかゆくもないので、異変を感じてから検査を受けてみたら、かなり悪化していたというケースが少なくない。また、健康診断や人間ドックで見つかっても、そのまま放置してしまう患者もいるという。

 中高年になると、目の病気が増える。失明を防ぐためには、定期的な検査を受け、異常が見つかったら早い段階で適切な治療を始めることが大切だ。

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