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デンタルフロスは歯周病予防にならない?

 日本でも話題になっていると聞きますが、AP通信がスクープした記事「デンタルフロスの効果に根拠なし」が波紋を呼んでいます。

「デンタルフロスは歯垢(しこう)を取り除き、歯周病を予防する」と推奨する米社会保険福祉省に対し、その理由を裏付ける調査結果の情報公開を求めたところ、調査自体がなされていなかったというのです。

 そこでAP通信が独自に民間の調査結果を集めました。すると、効果をはっきりと証明するだけの強力な証拠は見つからなかったのです。一方、取材とほぼ同時に、「デンタルフロス」が連邦政府の食事指針から姿を消したことも、クレームの正当性を裏付けるものと指摘しています。

 これが報道され大騒ぎになったのは無理もありません。なぜなら、米国人にとって、歯磨き時のフロッシングは、歯周病の効果的な予防策として常識になっているからです。

 そもそもいつからデンタルフロスが普及したのか? この興味深い記事を出したのはタイム誌です。当初は絹糸だったデンタルフロスが発明されたのは、19世紀初め。その100年後にはすでに米国人の日常になっていたといいます。

 そして1979年以降は、連邦政府の食事指針に掲載。ちなみにここに載るためには、はっきりした科学的根拠が証明されていることが法律で定められていると、AP通信は伝えています。

 米国人の間には戸惑いが広がっていますが、これに対し米国歯科医師会などの団体は「やめるのはまだ早い」と呼びかけています。

「調査結果がないだけで『効果なし』と決めつけるのも間違っている。正しいフロッシングで歯の間の食べ物のゴミや歯垢を取り除き清潔に保つことが、口の健康につながることは、経験値から見ても明確」

 こう、フロス不要論に対して異論を唱えています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com