夏バテ胃腸は秋口に立て直せ

胃腸の“センサー”を活用すれば調子は整う

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 逆にTRPV1が活性化すると、老化を促進するような代謝の変化が起きてしまうことも分かっています。つまり、痛みは寿命や代謝にも関わっていて、痛みを放置すると長生きできないということになるのです。

 夏に見舞われた胃腸の痛みも、漫然と放置してはいけません。TRPV1は、胃腸の痛みのセンサーでもあります。内視鏡検査で異常がないのに、胃が痛む病気(機能性ディスペプシア)や腸が痛む病気(過敏性腸症候群)では、このセンサーが過剰に活性化していることが分かっています。

 改善させるには、唐辛子を胸焼けしない程度の少量、長期にわたって食べる方法が有効です。唐辛子に含まれるカプサイシンを長期間食べると、TRPV1の感度が鈍くなり、活性化を抑えることができます。これは、「脱感作」と呼ばれるアレルギー治療と同じです。

 胃腸の調子を整えるには、昆布やかつお節に含まれるうま味のもとであるグルタミン酸や、ワサビに含まれるアリルイソチオシアネートを感じるセンサーを刺激するのも効果的です。

 うま味のセンサーが活性化すると、胃液の量を増やすとともに十二指腸の粘膜層を厚くし、胃酸から粘液層を守ってくれます。アリルイソチオシアネートのセンサーは、胃の粘液や血流を増やします。

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江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。