臨床現場での豊富な治療経験とちょっとしたアイデアから、画期的な新治療法が生まれることがある。例えば、がん患者らが苦しむ難治性の腹水治療だ。大病院や研究機関でないと最新治療はできないとの先入観はなくすべきだ。
末期のがんや肝硬変などの患者を苦しめる原因のひとつが腹水だ。
血管やリンパ管などからにじみ出した体液のことで、お腹の中にたまってお腹をパンパンに膨らませ、胃や肺などを圧迫する。その結果、腹部膨満感や食欲不振、呼吸困難などを招く。
ところが「腹水は抜けば体が弱る」との「医学の常識」が壁となって治療が進まず、多数の腹水難民を生んでいるという。
「特に水分や塩分の制限やおしっこを促す利尿剤でも改善しない難治性腹水は、“治療法がない”“抜けば一気に弱る”と医師側が敬遠し、事実上ほったらかしです」