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【脊椎手術】世界初の脊椎専用「ハイブリッド手術室」

湘南藤沢徳洲会病院の江原センター長
湘南藤沢徳洲会病院の江原センター長(提供写真)
湘南藤沢徳洲会病院/脊椎・脊柱側彎症センター(神奈川県・藤沢市)

 脊椎疾患には、「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」「脊椎すべり症」「脊柱側彎症」など、さまざまな病気がある。同センターは、その脊椎疾患の手術に特化した専門部門。江原宗平センター長(整形外科医)が言う。

「脊椎の中には体の大部分の神経をつかさどる脊髄が通っています。脊椎手術は、ひとつ間違えば四肢マヒなど重篤な障害につながりかねない。ですから手術には、より精度の高い技術が求められるのです」

 2004年開設以来、12年間で同センターが行ってきた手術総数(8月末現在)は3000例を超す。

 術後、大きなマヒが残った症例はないという。それは術者(2人)の豊富な経験もさることながら、最先端のテクノロジーを駆使しているところも大きい。もともと江原センター長は、国内の脊椎ナビゲーション手術のパイオニア。12年に設置した世界初の「脊椎専用ハイブリッド手術室」が同センターの最大の特徴となっている。

■複数の最先端技術を装備

「同システムは、従来のものと比べて格段に画像の作成処理が速く、撮影画面も広く鮮明です。それにより安全性が高く、かつ短時間に確実な手術ができるのです」

 ハイブリッド手術室は、6秒で撮影できる「ロボットアームによる多軸CT様画像作成装置」と、そのデータを映し出してナビゲートする「リアルタイムナビゲーションシステム」、それと「連動した手術台」の3つの最先端技術で構成されている。

 その精度は驚異的だ。例えば、脊椎を固定するボルト(ネジ)の位置や深さ、方向を外す確率は0.2%以下という。

「脊椎の周囲は大動脈があり、脊柱管に入れば神経を損傷する危険性もあります。それをミリ単位で判断でき、寸止め、コントロールできる。正確さが従来と全然違うのです」

「脊柱側彎症」の治療を積極的に手掛けていることも同センターの特徴だ。背骨が側方に大きく彎曲してしまう病気で、さまざまな病気に伴って起こる「症候性」と、思春期に発症する「特発性」があり、若年から高齢まで発症する。

 治療は、手術で曲がった背骨をボルトとロッドを使って矯正する。一般的には、背中を大きく切り開く「後方矯正固定術」や、背中から胸にかけて大きく切り開く「前方矯正固定術」が行われる。同センターが積極的に手掛けているのが「内視鏡サポートでの前方矯正固定術」だ。

 1994年に江原センター長が考案した術式で、脇の下辺りを7センチほど2カ所切開するだけ。そこから内視鏡サポートで脊椎を矯正する。

「脊柱側彎症は10~15歳の女性の発症が最も多いので、体に大きな傷をつけることは術後のQOLを大きく低下させます。内視鏡下での手術であれば傷痕は小さく、腕を下ろせば隠れます」

 傷の大小に関係なく、脊柱側彎症の手術は複雑。正確に実施できる医師は多くはない。ハイブリッド手術室を使った脊柱変形手術年間100例以上の手術実績は全国でもトップクラスだ。

■データ

 旧茅ケ崎徳洲会総合病院。JR辻堂駅前の再開発で新築移転して改称。
◆スタッフ数=医師2人
◆年間手術総数(2015年)=418件(頚椎72例、胸椎16例、腰椎222例、脊柱変形107例など)