本当は怖い!歯の病気

歯の損失の原因は感染症 EDをも招く歯周病菌の恐怖

歯磨きも予防に
歯磨きも予防に(C)日刊ゲンダイ

「若い頃から真面目に取り組んでおけばよかった」――。高齢者が健康について後悔している項目で常に上位に挙がるのが「歯のケア」だ。65歳以上の日本人2万人超を対象にした4年間の調査によると、歯の残本数が20本以上の人に比べて、10~19本の人は1・3倍、0~9本の人で1・7倍も死亡率が上昇したという。歯を1本失うごとにモノを噛む力が10%以上失われ、歯の喪失は全身に影響する。

 大事なことは、歯の喪失のほとんどは老化でなく感染症が原因ということ。つまり、歯磨きなどのケアで防げるのだ。

 そこで、健康を維持するための歯の知識を改めて整理したい。初回は「ED(勃起不全症候群)と歯周病」だ。

 2012年の「米国泌尿器科学会」年次集会で台北医学大学の研究が注目された。19万5000人の男性を対象に5年の追跡調査を行ったところ、ED群は、そうでない群と比べて慢性歯周病にかかった人の割合が3倍も高かったという。30~40歳の男性162人を対象にしたトルコの研究でも同様な研究結果が発表されており、重度慢性歯周炎にかかった人の割合はED群ではそうでない群の2倍以上だった。EDの診療に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「EDはなんらかの理由で海綿体への血流が減り、陰茎内の圧力が低下することで発症する病気です。その主な原因は動脈硬化といわれています」

 かつて動脈硬化は肉や脂などの食べ物との関係が指摘されてきた。ところが最近の研究では細菌やウイルスなどの感染により血管内皮が傷つけられて発症するとの説が注目されている。

「歯周病菌は血管から多数見つかっています。血管内に侵入した歯周病菌は血小板にくっついて全身を巡ります。動脈硬化を起こしている部位からも発見されていることから、血管の内側の膜にくっついた歯周病菌は炎症性物資を産出するなどして動脈硬化を発症させ、結果としてEDが発症すると考えられるのです」

 ならば、歯周病菌を減らせばいいのだが、それには歯磨きが最も効果的だ。八重洲歯科クリニック(東京・京橋)の木村陽介院長が言う。

「口腔内細菌は食べかすをエサにして増殖し、細菌の塊であるプラークを作ります。1日ブラッシングしないと2日で硬くなり、約2週間で歯石となります。これは歯周病菌にとって『砦』であり、この保護の下で増殖する。通常の歯磨きでは絶対に取れません。そうなる前にしっかり歯磨きすることが大切なのです」