これで痛みを取り除く

カテーテルはバイパスより負担少ないが長期開存率に劣る

 一定の距離を歩くと、ふくらはぎが痛くなり歩けなくなるが、しばらく休むとまた歩けるようになる。この症状を「間欠性跛行(はこう)」という。下肢の動脈が動脈硬化で狭くなる「閉塞性動脈硬化症」の典型的な症状だ。

 間欠性跛行が表れるのは4段階の重症度分類でいうと、Ⅱ度の状態(Ⅰ度は無症状)。歩くと足の筋肉への血流が不足して痛みが出る。国際医療福祉大学三田病院・血管外科部長の小櫃(おびつ)由樹生教授が言う。

「Ⅲ度に進行すると、じっとしていても痛い安静時痛が表れます。夜眠れないほど痛いので、麻酔を使う場合もあります。そしてⅣ度になると潰瘍・壊死(えし)が起こる。こうなると最悪の場合、切断が必要です」

 生活に支障がなければⅡ度までは、動脈硬化の原因となっている基礎疾患(生活習慣病)のコントロール、運動療法、血管拡張薬などの薬物療法で様子を見る。Ⅲ度になれば積極的に根治療法を行う。それはⅡ度で切断が必要になる確率は5年後で数%程度だが、Ⅲ度以降では切断の必要性が1年後で約30%と跳ね上がるからだ。

「入院して行う根治療法には、『カテーテル治療(血管内治療)』と『バイパス手術』がありますが、動脈の閉塞している病変の場所や長さ、質によって適応が違ってきます。両方を組み合わせたハイブリッド手術を行う場合もあります」

 カテーテル治療は局所麻酔で、太ももの付け根などから下肢の動脈の中に細い管を挿入する。その管の先につけた風船で動脈の狭くなった部分を広げ、金属製の網状の枠(ステント)を留置する。一方、バイパス手術は全身麻酔で行われることが多く、手術で動脈の病変部分を自分の静脈や人工血管と置き換える方法である。

 一般的にはカテーテル治療から適応が検討されるが、再発を起こさない期間の5年開存率はバイパス手術の方が10~20%良い。たとえば腸骨動脈の場合、バイパス手術の5年開存率は90%以上だが、カテーテル治療では70~80%という。

「治療をすれば足の痛みは消えますが、重要なのは術後の基礎疾患の管理です。閉塞性動脈硬化症があると、狭心症などの虚血性心疾患または冠動脈疾患の併存率が約3割、脳卒中の合併率が約2割といわれています。足の痛みは、すでに全身の血管に動脈硬化が進行している危険サインでもあるのです」