本当は怖い!歯の病気

頬ずりやキスも感染路 歯周病はペットからもうつる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「カミさんや子供は相手にしてくれない。俺をなぐさめてくれるのはおまえだけや」――。帰宅すると真っ先に出迎えてくれる愛犬や愛猫を抱きしめ、思わず頬ずりやキスをしてしまう中高年も多いのではないか。

 しかし、こうした行為が歯周病感染のキッカケになることを知っておいた方がいい。

 鳥類の免疫システムを利用して人や動物の健康サポートの研究を手掛ける「IRIG岐阜免疫研究所」の横山英明医学博士が言う。

「歯周病は人獣共通感染症のひとつで、犬や猫から人にうつったり、人からペットにうつったりすることがあります。これまでは犬に多かったのですが、最近は食生活や環境の影響で猫の歯周病も増えています」

 歯周病の代表的な菌のひとつが、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌だ。表面に繊毛がある嫌気性菌で、歯ぐきにくっつきやすい。そこに歯垢がかぶさることで菌が増殖する。やがて分解酵素を分泌して歯肉組織の歯槽骨を溶かしていく。この菌を持っていると歯周病患者は5倍病状が進みやすい。

 ペットの歯周病は獣医の間でも問題になっている。とくに犬は歯周病が多いことが知られており、8割近くが歯周病予備群だったという調査結果もある。「浦安中央動物病院」(千葉・浦安市)の周藤行則院長が言う。

「ペットは歯垢が歯石に変化するスピードが速く、人間のように痛みを訴えることができません。そのため、人より重症化する傾向がある。最近はペットの歯磨き奨励に力を入れる動物病院も増えています」

 ちなみに歯周病の犬は人と同じように臭いを放つ。そのほかに、食べるときに痛いせいか前足で顔をこすったり、くしゃみ、鼻水、鼻血を出す。歯周病が進行して歯槽骨の上にある鼻腔に穴を開け、鼻腔炎が発生するからだ。重症化しやすい下顎の歯周病が進行して下顎が骨折する場合もある。

 自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長が言う。

「口腔内の細菌バランスが不安定な子供や子犬、それに免疫力が低下している高齢者、糖尿病患者、老犬は要注意です。愛情表現で飼い主が噛み砕いた食べ物をペットに与えたり、ペットが飼い主の口をなめたりする光景をよく見ますが、それが歯周病菌の感染路になっている可能性があることは理解しておく必要があります」