当事者たちが明かす「医療のウラ側」

座るな危険 心臓病、肥満と直結「椅子依存」は死を早める

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
都内の40代勤務医

 日本は世界に誇る健康長寿の国です。世界保健機関(WHO)が発表した世界保健統計2016の平均寿命ランキングによると、世界一の長寿は日本で男女平均83.7歳、2位はスイスで83.4歳、3位はシンガポールで83.1歳です。

 健康的に過ごせる期間を示す、健康寿命でもトップは日本の74.9歳。以下、シンガポールの73.9歳、韓国の73.2歳と続きます。

 これを支えるのは魚や野菜中心の伝統食と毎日の入浴などといわれてきましたが、これに影をさすマイナス要因として注目されているのが座っている時間です。

 世界20カ国の成人を対象にした平日座位時間の国際比較研究によると、日本人は1日のうち55~60%、時間にして7時間座っているという結果が出ています。

 これは大変危険なことです。WHOの研究では、1日の総座位時間が4時間未満の群、4~8時間の群、8~11時間の群、11時間以上の群と分けて調べたところ、心臓病のリスクが11%ずつ高まることが報告されています。また、テレビを見るため1時間座ると、平均寿命が推定22分間短くなるなんていう報告もあります。

 他にも座ってばかりいる暮らしが健康に及ぼす悪影響についての研究はたくさんあり、「座ることは第二の喫煙」とまで言う人もいるのです。

 実際、オーストラリアの研究では、座る時間が1日4時間未満の人と11時間以上の人とを比べると、死亡リスクは後者の方が40%も高かったそうです。

 また、米国の研究では、日中時間の4分の1立っている人が最も健康で、肥満になりにくかったということです。

 座り続けることは、肥満、糖尿病、心臓血管病、肝臓病と直結していることがいまや医学の常識です。オフィスや自宅のパソコンやテレビの前、車の運転席、電車で長時間座り続けることは、じわじわと椅子によって殺されているようなものなのです。

 そのうち、「椅子依存症」という病名が広まり、死因の上位にくるかもしれません。